第2回は大学生前編。「北東北のドクターK」こと、八戸学院大(青森)の152キロエース左腕・高橋優貴(4年=東海大菅生)に注目だ。通算301奪三振を記録し、侍ジャパンでも活躍する西武多和田真三郎投手(25=富士大)が持つ299奪三振のリーグ記録を更新した。直球だけでなく、チェンジアップなどの変化球でも量産する奪三振術は、ドラフト上位指名も期待される。

高橋には1試合27個のアウトを奪う方法に、理想型がある。「ピンチの時に三振が取れることは、一番大事にしたい。内外角の直球での見逃し三振が、打者にとって最大のノーチャンス。空振りはバットに当たる可能性があるし、変化球は暴投になる可能性もありますから。野手だってエラーはつきものですし」。その中で、最も重要視することは「どんな調子でも必ず勝てる投手です」。手段よりも結果にこだわる男でもある。

1年時、多和田との直接対決で目標への指針を得た。「投げ合って、こういう選手がプロに行くんだなと感じることができたのは大きかった。その存在を追い続けてきて、記録を抜けたことは4年間の成果」。三振の取り方も変わってきた。入学当時は直球を中心にした力投派。制球を乱すことも多かった。変化球の意識も変わり、武器となるスライダーの緩急を生かして、決め球にも使えるような総合力が高まり、プロのスカウトの目に留まるようになった。

フォーム形成など二人三脚で寄り添ってきた正村公弘監督(55)も「最終学年になってチェンジアップを低めに集められるようになったことが、一番の成長。プロへの武器を得たことが大きい」と評価。キレを増した直球を有効活用し、スライダーやチェンジアップを決め球にするプロ仕様の「新ドクターK」構築にも成功した。

中学、高校時代はエースではなかったこともあり、努力の継続力も、誰にも負けない。高橋は「自分としてはプロ野球選手として足りているところは全くないと思っています。技術、気持ち、体力、すべて土台を作ってやっていきたい。練習、試合問わず『一球入魂』で1球ずつを大切にしたい」。301奪三振の大記録を自信に、今季最多勝を獲得した多和田を超えてみせる。【鎌田直秀】