「くせ者」育成への第1歩は、声出し確認だった。巨人元木大介内野守備兼打撃コーチ(46)が1日、宮崎秋季キャンプに合流した。

第1クール2日目で行われた紅白戦。三塁コーチとして大声で指示をした。得点圏の守備では内野陣に外野の位置を確認させ、遊撃手山本には「慶応でキャプテンだよな? Cマークつけようか?」とハッパをかけた。走者が出れば帰塁の際、ベンチ全員に「バァァァァック!」と張り上げさせ、けん制を警戒。「全員が1つのボールを追いかける。もっと集中してもらおうと思った」とうなずいた。

隙を見逃さないための準備だ。試合の状況を把握出来ていなければ、的確な声は出せない。今年8月に監督としてU12日本代表を率いた際も重視した。「強いチームは活気がある。声を出さないチームは指示を待っている」と説明。基本的なことだが「目を切ることなく見なければいけないので、ワンプレーに集中することにつながる」(田中俊)、「配球を見ることで、変化球が多いとか傾向をつかめる」(吉川大)と自主性を呼び覚ました。

強い巨人の原風景でもあった。現役時代、相手が嫌がることを模索した。そのためには常に試合に入り込む声出しは重要だった。「巨人の伝統でもある。昔は厳しく言われた。自分は須藤さん(当時のヘッドコーチ)に教わった」と過去の教えを今に生かす。

全体練習後はバント、バスター、進塁打の特打を敢行。「1点差勝負には必要」と技を磨かせた。原監督も試合中の的確な声掛けに「いやいや、口うるせえなと。さすがよく見ている。思ったことをパッと伝えられるしね」と目を細めた。

元木コーチは言う。「レギュラーでない選手は、レギュラーと同じ気持ちじゃダメ。ユニホームを脱いだら大変なんだから」と。好機を物にできなければ生き残れない。勝負強いくせ者イズムの浸透が、再建のカギを握る。【島根純】