日本ハムからドラフト1位指名を受けた金足農・吉田輝星投手(17)が15日、高さ143メートルの秋田市ポートタワー「セリオン」で仮契約を結んだ。契約金は1億円、年俸1000万円(推定)。今夏の甲子園で旋風を起こし、その動向が注目を集めた全国準V右腕は「1軍で投げること」をルーキーイヤーの目標に設定し「タイトルよりも勝てる投手に」と、将来像を思い描いた。

秋田港にそびえ立つタワーの上で、17歳の瞳は球界の頂点をしっかりと見据えていた。

吉田 早く野球をやりたいという気持ちが強くなった。今までは部活だったけど、仕事になる。自分に足りないものを客観的に見られる力が必要。球界を代表する選手になりたい。

今夏の甲子園で、日本列島を熱狂に包んだ準V右腕の表情は、すでにプロの顔。冷静に現在地を見つめ、将来像を描いた。

今も週2回ほど、ブルペンで捕手を立たせて投げ込みを行う。来年1月の新人合同自主トレに合わせて、走り込みで下半身強化にも余念がない。「ストレートと、もう1つ、武器になる変化球を見つけていきたい」。狙いを定めているのは、直球と同じような軌道で変化するカットボールとツーシームだ。「甲子園でも投げていたけど、どうしても曲げようという意識が強くて、スライダーのようになってしまった」。プロ仕様になるよう、磨きをかける日々。「開幕までに完成できたら」と、もくろむ。

秋田が生んだヒーローの声を届けようと、仮契約後に行われた記者会見にはテレビの中継車4台、28社81人の報道陣が集まった。「応援の力は勝ち進むのに重要な力だったので、感謝しています。それを甲子園で実感できた」。サインも決まった。「名前に星がついているので、星を入れたらいいかなと」。3年生のチームメートと一緒に考えたものだ。

「調子が悪い時も良い時も試合をしっかり組み立てて、絶対に勝てる投手になりたい。今から努力するので、応援していただけたら」。紅葉の季節は間もなく終わり、秋田にも雪が降る。灼熱(しゃくねつ)の甲子園から、次はプロの世界へ。雪を踏みしめ走り込んだ先に、輝く未来があると信じている。【中島宙恵】