音楽界にも、摂津の生き様に魅せられた男がいる。プロ5年目の13年から使用するオリジナル登場曲「STRONG ISLAND」を提供する人気ヒップホップグループ、餓鬼レンジャーのGPだ。

摂津が中継ぎを務めていた入団当初。当時に使用していた登場曲を歌った人気グループのET-KINGと餓鬼レンジャーが同じ事務所で、まだ結婚前だった摂津の夫人とGPが知人だった縁があり、2人は知り合った。元々、ソフトバンクファンだったGPと摂津は意気投合。プライベートでも食事に行くなど親交を深め、オリジナルの登場曲を作ることになった。

GPは他のメンバーと投球の映像を見たりしながら、自身が知る摂津の人間像を絡めて曲を作った。「ベンチからマウンドに上がっていく姿を見て、曲のテンポなどをイメージした。摂津は立っている姿がかっこいい。怒りとか悲しみも表に出さない。でも秘めているものはすごくある」。タイトルでもある「STRONG ISLAND」とはマウンドのことを表している。寡黙に、孤高に、マウンドに立つ摂津の姿を思って作られた1作だった。

曲が完成し、デモテープを渡すと、摂津は「本当にいい曲を作ってくれてありがとう」と感謝した。曲が初めて球場に流れた13年の本拠地初登板日に、GPらはヤフオクドームに招待された。「STRONG ISLAND」とともに、大きな拍手の中で摂津がマウンドに上がる姿を見て感極まった。「涙が出ましたね」と思い起こした。

摂津はエースだった栄光のシーズンも、苦しんだ晩年も、この曲とともに歩んだ。GPは摂津を後押ししようと、19年シーズンに向け、曲をリメークする考えもあった。1人のファンとして、最後まで復活を信じ続けた。

摂津の引退を受け、GPは「僕自身が子供の頃はプロ野球選手になることが夢でした。今はミュージシャンとして活動させてもらってますが、彼にはたくさんの感動と夢を見せてもらいました! 僕達の作った音楽をバックにマウンドに立ってる姿は一生忘れません。プロ野球のマウンドで摂津を見られなくなるのは本当に寂しいですが、これからの人生も友達として応援していきたいなと思っています」と熱く話した。第2の人生でも「STRONG ISLAND」が摂津の背中を押し続けるはずだ。【山本大地】