日本ハム上沢直之投手(25)が2日(日本時間3日)初の開幕投手へ、新たな投球術に着手した。

今キャンプ初めてブルペン入り。カットボールを右打者の内側からえぐってストライクボールを投げる「フロントドア」を試投した。右の強打者が多いパ・リーグで勝ち抜くため、投球のアップグレードに挑戦する。

「“こっち”のカット、行きます」。上沢がブルペン投球の47球目に言った。捕手は右打者の内角にミットを構えた。開幕投手候補が投げたのは通称「フロントドア」。右打者相手にカットボールを、ボールからストライクゾーンへ変化させる高等技術だった。

明確な意図がある。「バッターがびっくりする球、あまり見ない軌道を見せたら、他の球種も生きてくると思う。苦しい時に見逃しを取れるボールがあったらいい」。元広島の黒田氏はスライダーでフロントドアを決めていた。近年、メジャーで見られる投球術は、日本にも普及している中で、上沢はカットボールを選んだ。「日本では内角のスライダーを投げる人はいても、カットボールはいない」からだ。「デッドボールの軌道から入ってきたら打者は予測しづらい。意外と、その辺のラインのボールを打者は消しているので」と勝算もある。

昨季の悔しさが、新たな引き出しの必要性を感じさせた。シーズン被打率で対右打者は2割2分4厘と抑えるが、被本塁打は12本。3本の対左打者と比べて突出した。今季もパ・リーグには右の強打者が各チームにいる。「僕は西武打線に打たれているイメージ。山川さんとか楽天に行った浅村さんとか。そういう人たちにも使えるかなと思っている」と想定する。

きっかけは昨秋の日米野球で同僚だったカットボールの使い手、広島大瀬良との会話から。「そういう球を練習していると聞いたので。僕もメジャーリーグを見ていて、右打者の内側から入ってくるボールは、けっこう見逃すと感じていた。投げられるなら使いたい。引き出しがあった方がいい」。この日は66球。カーブ、スライダー、フォーク、ツーシームも投げた。カットボールが内外に投げ分けられれば、直球も含めて7つの軌道で打者を幻惑できる。開幕投手を狙う8年目右腕は、進化を遂げて大役をつかみに行く。【スコッツデール(米アリゾナ州)=木下大輔、田中彩友美】