遊撃再奪取へ好発進! 阪神鳥谷敬内野手(37)が、断トツのキャンプ第1クールMVPに輝いた。矢野燿大監督(50)は初日から若手に交じってハッスル姿を絶賛。阪神のキャッチフレーズにちなみ、「オレがヤル」と題して選手の意気込みをお届けする企画。第3回は、再起を期す男の意地だ。

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青い打撃手袋をはめた鳥谷が、声援を浴びて打撃ケージに入った。右腕才木が投じた22球中、ヒット性の当たりは3本。最後は狙い澄ましたように、右翼で打球を捕る糸井の前にライナー性の打球を弾ませた。まだキャンプが始まって3日目。昨年はベテランの立場で調整してきた。この時期に打撃投手を務める若手投手の球を打つことは異例の出来事だ。だが、本人は意に介さない。

「出来ることは何でもやってという感じ。流れ的に(打撃の順番が)回ってきたので、打たせてもらおうかなと」

キャンプ序盤から宜野座の主役になった。初日から若手に交じり、全メニューを消化。この日行われた初のシートノックにも参加し、慣れ親しんだ遊撃でファンを沸かせた。打撃練習後の坂道ダッシュでは、20メートル10本、25メートル5本を全力疾走。20メートルでは俊足植田の2秒80に次ぐ2秒86をマークした。球団史上最多2066安打の実力者が、全力のフル参戦だ。

指揮官も驚かせた。「想像はしてたけど、想像よりも…」とうなった矢野監督はこう続けた。「トリってめっちゃ表現するタイプではないと思う。人それぞれいろんなタイプがいる。その中でも、にじみ出るように感じられた」。寡黙な男から放たれる熱い思いが、矢野監督の心も震わせた。文句なしの第1クールMVPだ。

7日にはキャンプ初実戦となる紅白戦も予定されている。現時点で出場する可能性は低そうだが、鳥谷は「いつでもいけます」と言い切った。練習後に行われた野球教室では、ある少年から「うまくいかない時はどう乗り越える?」と質問された。鳥谷は「失敗から新たな失敗をしないように、次は成功する姿を想像しています」と答えた。前を向き、全力で進む。背番号1が南国沖縄で燃えている。【桝井聡】

 

他球団の007も鳥谷の動きに警戒感を強めた。中日井本スコアラーは「いい動きをしている。才木のまっすぐも良かったけど、しっかりと捉えている」と、打撃練習を注視。DeNA東野スコアラーは「全体メニューに入っている時点で動けている」と驚いていた。