投打二刀流の大学1年生が誕生する。首都大学リーグ・日体大の来年度新入生が5日、全体練習に初参加した。25人の新入生の中で頭1つ小さく線も細い、173センチ、63キロの存在がひときわ目立っていた。

矢沢宏太投手は藤嶺藤沢(神奈川)時代は甲子園経験はない。同期には大阪桐蔭、智弁和歌山など名門校出身も多い。「テレビで見た人たちが周りにいるので…。その分、自分は何も看板というか背負うものがないですし、有名でもないので。プレッシャーなく野球をできるような気はします」と話す。

それは、今のうちだけかもしれない。日体大・古城隆利監督(49)は矢沢について「投手、打者の両方の可能性を試したい」と二刀流育成を明言した。リップサービスではない。練習初日のこの日、最初は投手組で練習した矢沢は、途中から野手組へ。フリー打撃でフェンス直撃の当たりも2本、放った。

最速149キロ左腕でありながら高校通算32本塁打をマークし、50メートル走も5秒8。昨夏終了後にはプロ10球団から調査書が届いた。投手評価の球団、打者評価の球団が二分されたように、それぞれに決め手に欠けたのか、ドラフト指名はなかった。複数球団からの育成指名の打診は断った。

「もし、ここでたまたまプロに入っちゃって、試合にも出られない立ち位置ならば、大学で4年間しっかり頑張って、絶対にドラフト1位で行こうと思いました」。

大学では投手か、打者か。古城監督に「どうしたい?」と問われた矢沢は「自分は大学の方針に従います」と答えた。監督は「じゃ、両方やろう」。矢沢は「どっちも好きなので、うれしかったですね」と表情を崩す。高校でも練習は投打で両立してきた。違和感はないという。

外野からリリーフへ、先発で投げてから外野へ、可能性は広がる。高校時代は3番打者。俊足を生かし「1番・投手」の可能性もある。古城監督も「あるかもしれませんね」と真顔で話す。「いろいろ挑戦したいです。最後はどちらかに絞ると思いますが、4年後はドラフト1位に選ばれたい」。矢沢は約20分間で「ドラフト1位」と4回、口にした。【金子真仁】