大学球界でうわさの剛腕が、レジェンドからお墨付きをもらった。元プロ選手が大学野球選手を指導する「冬季特別トレーニング」が6日、川崎市のジャイアンツ球場で行われた。投手部門は元巨人監督の堀内恒夫氏(71)らが講師を務めた。「今回はレベルが高いね」と熱のこもった指導を振り返った。

通算203勝の名球会投手が、原石に一筋の輝きを与えた。首都大学リーグ2部・玉川大の山田綾人投手(3年=桐光学園)への20分間の投球指導を終えると「直球だけで押せると思うよ。そうは打たれない。あれがインハイに来たら、振っちゃうよ」と186センチ93キロの大型右腕を見ながら、うれしそうに話した。

高校時代、ケガに苦しみ公式戦登板はゼロ。大学入学後も1年秋に151キロをマークしながら、昨年は右肘痛で公式戦登板はわずか2試合。知る人ぞ知る存在だった。大学で指導するのは、元巨人の樋沢良信監督(69)。「投げないうちにフォームが崩れたし、堀内さんに見てもらえるのはちょうどいい」とトレーニングに足を運んだ。

「小さくまとまるな、自分の力を信じて投げろ」。心に響く言葉を届けた上で、もちろん技術的なアドバイスもした。「山田に言ったのは、たった2つだけだよ」と堀内氏は言う。

「44センチ高いマウンドから投げるんだから、目線がまっすぐだと球が高めに浮くのは当たり前。あごを左肩に落とすイメージで」

「足を上げて、体重が軸足に乗ったのを確認してから投げてくれ」

特に、山田には前者が刺さった。「目線は真っすぐなのが普通と思っていました。今まで知らなかった。教わって、やってみて、すぐに効果が実感できたのがすごい」。重く、速い直球が、低めにしっかり決まるようになり、自分でも驚いたという。

樋沢監督のもとには、プロ球団からの問い合わせも届き始めた。この日の堀内氏の金言で、さらに進化しそうな気配だ。「不器用な投手。でも教えりゃ面白いかもしれない。151キロ? もっと速くなるよ」。玉川大から初のプロ野球選手は誕生なるか…の域を超えてくるかもしれない。ザ・原石がこの春、いよいよ光り出す。【金子真仁】