これ以上ないアピールだ。ヤクルト広岡大志内野手(21)が14日、韓国・KIAとの練習試合(浦添)で満塁本塁打と3ランを並べ7打点を荒稼ぎした。守備では本職の遊撃手ではなく、2試合連続で一塁手でスタメン。飛躍の4年目へ、なりふり構わずポジションをつかみにいく。

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降り始めた雨粒を切り裂いて、広岡の打球は芝生が広がる外野席を越えていった。4-2で迎えた5回2死満塁。カウント2ー1、右投手の137キロ直球を左翼の場外まで飛ばした。推定130メートルの行方は確認せず「コースが甘かったので、結果としてホームランになってよかった」。4回1死一、三塁でも初球を左翼ポール際へ運ぶ逆転3ランを放ち、2発7打点の荒稼ぎ。勢いのまま「打たなければ試合に出られない。どんどん打ってアピールしていきたい」と言った。

身長183センチ、体重81キロの大型遊撃手。ヤクルトの将来を担う中軸候補だ。リーチが長い分、バットが遠回りする課題を克服するべく、マウンドから3分の2ほどの近い距離から速い球を投げてもらい、無駄を極力そいだスイング軌道を意識。昨季は2軍落ちも経験し出場45試合にとどまっており「去年の悔しさをずっと持ってやってきた」と愚直に振り込んで浦添に入り、まずは結果を出した。

身近な先輩の成長曲線をたどる。智弁学園の1学年上に巨人岡本がいる。プロ4年目で台頭し、巨人軍第89代4番打者に駆け上がった。「ずっと身近な存在。目標というか、負けたくない。自分も4年目に活躍できるようにしたい」。内外野をこなしながら試合数を重ねていった先輩のように、守備位置にこだわるつもりも余裕もない。キャンプ実戦は2試合続けて一塁手で先発。ファーストミットは持っていないため、用具担当の私物を借りて無難にこなした。

外野は左翼からバレンティン、青木、雄平で盤石。ベテラン、若手と陣容豊富な内野の一角が生き残りとブレークの道。小川監督は「見事。これを大きな自信にしてつなげてほしい。ファーストは意外といない。守備はどこも不安なく守れるし、あれだけ打てれば出場機会も増えていく」。手放しの評価を受け続けるだけだ。【保坂恭子】

▽ヤクルト石井琢打撃コーチ(広岡に)「取り組んだ成果が出ている。今季に覚悟を持って臨んでいることが分かる」