巨人で16年培ったプロの極意を、フレッシュなチームに注入する。発足2年目になる北海道ガス(北ガス)野球部に、今季から前巨人トレーニングコーチの伊藤博野手兼トレーニングコーチ(53)が就任した。体づくりから、技術、戦略まで携わり、元社会人日本代表を率いた小島啓民監督(55)をサポートする。就任のきっかけから、巨人での経験談、全国舞台を目指す北ガスでの意気込みを聞いた。【聞き手 永野高輔】

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-伝統のあるプロ球団から、昨春発足したばかりの北海道の社会人チームの一員になった

伊藤コーチ すべては縁。人とのつながり。小島監督とは20年以上のつきあい。最初は社会人野球の新人研修会で、私がトレーナーで小島さんが三菱重工長崎の監督だった。巨人時代も小島さんが率いた社会人野球の日本代表と試合をした。プロ球界でも指導力の高さ、包容力のある人柄が有名で、尊敬できる方だった。巨人を辞めた後、「一緒に、パワーとスピードではどこにも負けない、世界一意識の高いチームをつくらないか」と声をかけられた。今回は技術、戦略にも携われる。非常にやりがいのある仕事だと思った。

-指導方針として柱としていることは

伊藤コーチ 巨人のヘッドコーチをしていた須藤豊さんに「教えるんじゃない。みつけて、引き出して、磨くんだ」と言われたことが、座右の銘みたいになっていて。選手が求めているものをいかに見極められるか。その姿勢は常に意識してきた。さらに、プロのトレーニングコーチは、チーム戦略のために、ある選手の動作改善を行う作業がある。打撃の弱点をカバーするために、特定箇所の柔軟性を高めたりして、もっているポテンシャルを引き出す。そういう経験も、生かしていけたら。

-巨人時代に多くの選手の体作りに携わてきて、印象に残っている選手は

伊藤コーチ 取り組む姿勢で際立っていたのは菅野(智之投手)。明確な目標を持って一切、手を抜かない。自分に必要なことを考えて取り組み継続する。生き残る選手は自分で優先順位をつけて、必要なことは絶対に波をつけず続けられる。それは社会人野球でも一緒だし、単純なことでもきちっと中長期的に継続できることが、技術向上には大事だと伝えていきたい。

-2月に就任して約1カ月。チームの2年目での全国切符獲得へ力を注ぐ

伊藤コーチ プロのノウハウをそのまま用いるだけでは通用しないこともあるし、過去の経験にあぐらをかくつもりもない。小島監督、渡部(勝美)コーチに学び、自分も勉強しながらチーム強化に貢献したい。その中で、プロ選手の力加減や動きのシルエットとか、ここはこうだったと、伝えられるものがあれば伝えていきたい。ただ、言い過ぎないように。僕はプロ選手ではなかったし、聞かれたら感じたことを感じたまま伝えることに徹したい。

 

 

北ガスは伊藤コーチの加入で、役割分担がより明確になった。昨季は小島監督が野手、渡部勝美コーチ(56)が投手担当だったが、今季は伊藤コーチが野手担当となる。トレーニング面も安立貴史トレーナー(33)が投手中心、伊藤コーチが野手中心に体作りを担う。新スタッフ加入に小島監督は「とても熱意がある。豊富な経験を生かして選手をどんどん鍛えていって欲しい」と期待した。

 

◆伊藤博(いとう・ひろし)1965年(昭40)11月21日、東京都練馬区生まれ。練馬区石神井小3年で野球を始め、上石神井中、国学院久我山、明治学院大と内野手でプレー。大学卒業後にセントラルスポーツに入社し、競泳のコーチなどを務める。03年に巨人2軍トレーニングコーチに就任。05、06年1軍、07年から15年途中まで2軍、同年途中からから昨季まで1軍で尽力した。176センチ、81キロ。血液型A。