あの夏から13年。日本ハム斎藤佑樹投手(30)が9日、阪神とのオープン戦(甲子園)で高校野球の“聖地”に凱旋(がいせん)した。先発は、早実時代に全国制覇した06年夏の甲子園大会決勝再試合以来で、実に4583日ぶり。2回を投げて無安打無得点3奪三振と完璧な内容で、1軍での復活を予感させた。実戦は全3試合で計7回無安打無得点を継続中。今年の佑ちゃんは、ひと味違う。

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指に息を吹きかけ温めながら、日本ハム斎藤が気迫の30球を見せた。「すごく良いわけではなかったけど、気持ちで抑えました」。早実時代に一世を風靡(ふうび)したハンカチが不要なほど、冷たい浜風が舞う甲子園。13年ぶりに“聖地”の先発マウンドに立った背番号1は、熟成した大人の投球で打者6人を手玉に取った。

1回、上本から外角低めいっぱいの直球で見逃し三振を奪ってスイッチオン。2回は4、5番の中軸助っ人コンビを直球で打ち取り、最後は鳥谷を足元へ鋭く切れ込むカットボールで空振り三振に斬った。「ワンバウンドしている球もあったので、それは次の課題」と冷静だったが、2回は先頭のマルテを3ボール1ストライクから仕留めるなど要所での制球は見事。栗山監督を「投げっぷりがいい。野球を支配するような感じがよみがえった」と、喜ばせた。

実戦3試合で計7回無安打無得点。好調の要因を「気持ちを強く持って打者と勝負しているだけです」と言う。伝説となった06年夏の甲子園大会決勝で、エース田中(ヤンキース)を擁する駒大苫小牧と演じた延長15回引き分け、そして翌日の再試合での投球。「周りは『マー君と対決』と言うけど、僕にはそんな意識はなかった。対決するのは打者だから、そのことしか頭になかった」。最速は137キロ止まりも、勝負度胸や打者との駆け引きを可能にした制球力を、長い時を越え再現してみせた。

背水の覚悟で挑む今季。1軍の戦力となる雰囲気が、ぷんぷん漂う。【中島宙恵】