古巣相手に、負の歴史に終止符を打った。巨人丸佳浩外野手(29)が開幕から12打席目に移籍後初安打初打点を挙げ、勝利に貢献。巨人は広島戦で2シーズンぶり、マツダスタジアムでは17年7月4~6日以来の勝ち越しを決めた。丸は昨オフ、悩み抜いた末に「第2の故郷」と愛した広島を離れ、巨人への移籍を決断。運命的な古巣との開幕カードで「巨人・丸」として、1歩を踏み出した。

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二塁ベースに達し、丸は手をたたき、小さく右拳を握った。開幕から11打席連続無安打で迎えた、同点の5回2死二塁。“ダブル3番”の1人の坂本勇が凡退した直後、一時勝ち越しの移籍後初安打を放った。「詰まりましたが、風に乗って飛んでくれた。まだまだ足を引っ張ってばかりなので、これからもっともっと頑張ります」。盛り上がるベンチに会釈で応えた。

苦しみながら、求められた役割を演じ、鬼門・マツダスタジアム突破に貢献した。開幕戦は4打席連続三振と悪夢のスタートだったが、2戦目は3四球で2得点。「1本出るまでは不安な気持ち」でも安打に固執せず、チャンスメークに徹し、3戦目にひと振りでHランプをともした。「1本出たのは良かったけど、単発で終わらないように」と淡々と話した。

昨オフ、フリーエージェント(FA)を宣言したが、当初、心を広く占めたのは残留だった。野球人として、広島で進化。さまざまな情報が飛び交ったが、私生活では広島に居を構え、家族とともに生活。「今の自分があるのは、カープのおかげ」と公私ともに広島の環境には満足だった。

「安定志向」と表する心を動かしたのは、原監督だった。FA交渉の場に直接出馬し、自らの現役時代の背番号を提示した上で熱っぽく語った。「僕を本当に必要としてくれたのがうれしかった」。優勝争いを繰り広げるライバルチームへの移籍。重圧を真っ向から受け止め、巨人で、原監督のもとでプレーすることを決断した。

自分では「普段通りに臨んだつもり」の開幕カードだったが、グラウンドに立てばさまざまな思いが去来した。丸に全幅の信頼を寄せる原監督は、短くコメントした。「これからどんどんいい方向にいく。まだまだこれからよ」。丸が勢いに乗って、初の伝統の一戦を迎える。【久保賢吾】