意地のメモリアル弾だ。阪神福留孝介外野手(41)が日本通算1000打点を今季1号で飾った。8回8点ビハインドにも集中力を研ぎ澄まし、広島中田の変化球をバックスクリーンに運んだ。41歳11カ月の達成は谷繁元信氏(48=日刊スポーツ評論家)の42歳5カ月に次ぎ、2番目の年長記録。前夜逆転勝ちの勢いを生かせず10失点で完敗した中で、前主将がバットでチームを鼓舞した。

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記念すべき打点を、驚きの豪快アーチで刻んだ。8回1死走者なし。カウント1-2の6球目だった。白木のバットを握りしめた福留が、広島中田の真ん中に入った変化球をきれいなスイングでつかまえた。打球はセンター方向へ一直線に伸びると、そのままバックスクリーンに吸い込まれた。

夕刻のマツダスタジアムに敵味方関係なく降り注ぐ両軍ファンからの拍手。ダイヤモンドを一周し、花束を持った福留は、スタンドに向かって深々と頭を下げた。「本当にありがたいこと。1人で出来ることではない。そういう中での積み重ね。周りの方にも感謝です」。大量8点差にも集中力を切らさず、3年前に日米通算2000安打を放った球場で、メモリアル打点を記録した。

「孝介がホームランを打つ夢を見た。そんなことばっかり考えてるからかな」。広島からはるか600キロも離れた鹿児島・大隅半島で毎日のようにテレビの前に陣取る父・景文さんだ。開幕直前に福留が本塁打をかっ飛ばす姿が夢に出てきた。予言していた豪快アーチ。だが、まさかそれが日本通算1000打点を刻むアーチとは…。夢を超える現実だった。

今月26日には42歳の誕生日を迎える。セ・リーグ野手最年長に、チーム最年長と「年長」が注目される。だが、グラウンドでユニホームを着る福留は、年齢を理由にすることは一切ない。敗戦の試合後、プロ20年生はいつものように次戦に目を向けた。「今日の負けを引きずるんじゃなく切り替えて。毎日それの繰り返しだから」。日々繰り返す努力を積み重ね、想像を超える領域に到達。完敗試合でもナインを鼓舞し、7日の必勝を期した。【桝井聡】

 

◆PL学園時代の元監督中村順司氏「40代になった今も、チームの中心選手として活躍し、また1000打点を達成したのは日ごろの節制のたまものだと思います。センターバックスクリーンへの本塁打で達成したのも、孝介らしい。高校時代から見てきて、春夏の甲子園でのホームランや国体などで記憶に残る記録を残してきたのが孝介です。本当におめでとう。でもグラウンドでの姿を見る限り、まだ通過点だと思います」