地方の鬼が現れた。楽天辛島航投手(28)が9日、西武戦に先発。5回7安打4失点で今季2勝目を挙げた。山川に3ランを浴びるなど苦しい展開になったが、何とかチームの連敗を2で止めた。地方球場では17年に4勝を挙げるなど、勝ち運のある場所。中継ぎ陣に地方球場特有のマウンドの癖を伝え、勝利に貢献するなど投球外でも仕事を果たした。

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鬼気迫る表情でマウンドに仁王立ちした。辛島は恐れずに、思い切り左腕を振った。2点差に迫られた5回2死一、二塁、打席には山川。配球に迷いは無かった。外、外、外。3球全て外角へのチェンジアップで中飛に仕留めた。直前の4回の打席では外寄りの直球を左中間スタンドへとたたき込まれたが、タイミングを外した。「4、5回はバランスが急に悪くなって、うまいこといかなかった。ホームランされても、まだ3点あると思いながらは投げました」とうなずいた。

同学年の仲間の援護に応えないわけにはいかなかった。1点差の5回、浅村が場外への2ランを放って点差を広げた。「アサ(浅村)が5回に2点取った中でピシッと流れを持ってこられたら良かったけど」と5回に1失点したことを悔やんだが、「3点取られた後ですからね。あの2点で流れが変わったというのはある」と勢いづいた山賊打線を何とか封じ込めるエネルギーになった。

ピリッとしなくても、鬼に金棒の助言をほどこした。地方球場ならではの軟らかいマウンド。回が進むにつれて深く掘れて、投球時のバランスを保つのが難しくなった。その状況を後続のリリーフ陣に伝達。9回を3者凡退に斬った松井は「辛島さんからブルペン裏で聞いて、調整しました。ブルペンは傾斜が高いのに、球場のマウンドは傾斜がない。いつも踏み出す位置よりも足の位置を修正して投げられました」と快投につながったと感謝した。

苦しみながらも5回4失点にまとめ、平石監督も「地方球場特有の掘れるマウンドでバランスを崩したけど、よく粘ったと思います」とたたえた。今季2勝目を挙げた左腕は「とにかく何とか今日は勝てて良かった」と胸をなで下ろした。万全でなくても勝つ。地方の鬼が連敗を止めた。【島根純】