阪神ドラフト1位の近本光司外野手(24)がプロ1号をかっ飛ばした。4点を追う7回に代打で出場し、DeNA国吉の143キロ真っすぐを力で右中間席へはじき返した。新人の本塁打は12球団一番乗りで、阪神では04年鳥谷以来となる会心弾。チームは初戦のミラクル大逆転勝ちを生かせず痛い連敗を喫したが、期待のルーキーが希望を灯した。

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近本が虎の意地を一振りに込めた。代打で打席に立った7回。国吉の143キロ直球を迷いなく振り抜いた。「しっかりファーストストライクを振るのと、しっかり塁に出るのを意識して振りました」。打球がライトスタンドに吸い込まれると、背番号5は大歓声に包まれた。表情を崩さずベースを回る。「ナイスバッティング!」「おめでとう!」。ハイタッチで迎えるナインに声を掛けられ、少し笑みがこぼれた。

近本のプロ1号は、12球団のルーキー最速弾となった。「ホームランが甲子園で出て、それも最初のホームランで良かったかなと思います」。関学大時代もリーグ戦で甲子園でプレー経験があるものの、本塁打はゼロ。「あまり相性はよくなかったですね、大学生の時は…」。苦笑いで振り返っていた聖地を、一打で記念すべき場所に変えた。

170センチ、72キロ。プロでは小柄な体形に秘められたパンチ力は、幼い頃から養われた。意識するのは「遠心力」。小学生の時から掃除用のほうきをブンブン振り回し、子どもが扱えないような長さのバットでロングティーで体を鍛えてきた。現在使っているバットは、先端に重さがある890グラムのタイプ。春季キャンプで9種類のバットを持参し、試行錯誤した末に「遠心力」を生かせる相棒を見極めた。

開幕スタメンをつかんだが、9日のDeNA戦から代打での出場が続く。だがドラ1ルーキーは頼もしい。「難しさはそんなに感じていないですね。気持ちの作り方は、代打の方が緊張感というか、1打席に集中できるのでいいかなと思います」。矢野監督も人並み外れた勝負強さを称賛した。「代打というのは本当に難しい場面なんですけど、振り切った素晴らしい打球でしたね」。敗戦の中で虎党を沸かせ、希望を感じた1号だった。【磯綾乃】

▼近本が1号本塁打。阪神新人選手の12球団本塁打一番乗りは、04年鳥谷以来15年ぶり。鳥谷は同年5月27日横浜戦(甲子園)で、東和政からバックスクリーン右にプロ1号。なおこの試合はチーム43試合目。近本は12試合目で、鳥谷の記録を大幅に更新した。なお阪神新人の代打本塁打は、梅野が14年5月6日中日戦(ナゴヤドーム)打って以来、5年ぶり。