これぞ4番の活躍や! 阪神が若き主砲の覚醒で首位ヤクルトを圧倒した。大山悠輔内野手(24)が初回に2戦連続の先制3ランを放つと、3回には2打席連発の4号ソロ。開幕から打撃不振に苦しんだ男が引っ張り、チームは合計5発で今季最多の13得点。19日から始まる平成最後の巨人戦(甲子園)に向け、はずみをつけた。

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捉えた瞬間、三塁側ベンチも左翼スタンドの虎党も両手を突き上げた。バットを振り切った大山が、ゆったりと走りだす。目で追いかけた白球は左翼席に着弾。2戦連続の3号3ランに、ニヤリと笑みを浮かべ、ダイヤモンドをまわった。

「ファーストストライクからしっかり強く振ることができたことで、甘い球を仕留めることができた」

先制パンチだった。初回1死一、二塁の好機で、ヤクルト先発大下の4球目をバットに乗せた。左翼席の虎党へ、先発岩田へ白星をプレゼントだ。

勢いは止まらない。3回には2打席連発となる4号ソロを左翼席へ突き刺した。「前の打席と同じように思い切りました」。持ち味は思い切りのよさ。ただ、4番に座ってからはマークが厳しくなり、思うようにバットを振らせてもらえなかった。影を潜めたフルスイング。「試合の中でイメージと違っている部分もある」と、苦悩の日々を過ごした。スイングのこだわりは「形ですね」と撮影動画をチェック。「癖を細かく分析していかないと」。ある時は首脳陣に教えを請い、ある時は裏方スタッフの言葉に耳を傾けた。熱心に自らの現在地を確認したからこそ、今がある。

4回にも左翼フェンス直撃の二塁打を放って、今季初の猛打賞。開幕から低調だったが、徐々に上げてきた。浜中打撃コーチは「自分にも経験があるけど」と前置きした上で「4番として初めて仕事ができたと思っているんじゃないかな。練習でもスイングの形がよくなってきた。自信が出てくると思う」と自らの体験も元にして、和製大砲候補のさらなる飛躍を願った。

大山は17年の新人時代から4番を任され、球団の期待を一身に背負う。だが、これまで試合を決める一撃は目立たず、4番での出場42試合目にして「V弾」は初めてだった。

口にしたことを実現するために、バットを持つ。「(打っても)勝たないと意味がない。勝てるように頑張ります」。17日に宣言した通りの活躍。19日からの「平成最後の伝統の一戦」はずみをつけた。【真柴健】