楽天釜田佳直投手(25)が、6回途中5安打3失点で17年7月5日のロッテ戦以来となる655日ぶりの勝ち星を挙げた。

本拠地のファンから注がれた万雷の拍手に瞳が潤んだ。「諦めずにやってきて良かった。ここに来るまでに、たくさんの方に支えられた。何とか勝利という形で(感謝を)表現したいと思っていた。あの大歓声を忘れることはないと思う」と目頭をぬぐった。

昨年6月に右肩と右肘を手術。春季キャンプで再び痛みが出た。「松坂さんは同じ肩の手術から復活した。僕が頑張れば、関節唇を縫ったり、腱板(けんばん)を修復する1歩手前の道を示せると思うんです」。そう誓ったはずの心が揺らいだ。同じく肩を痛めた安楽を介して「わらにもすがる思いで」頼ったのが、中日松坂の肩を治療した人物。当時痛みの出る肩の前側だけでなく、両側から内視鏡を入れたことで、後ろ側の筋肉もダメージを負って硬くなっていることを指摘され「原因を理解し、納得できたのが大きかった」と転機を語る。

1回の最速148キロも、3回のピンチで連発した147キロも、高校時代に北信越でしのぎを削った同学年の吉田正を迎えた場面で出した。「一番いいバッターだと思っているので」。ここぞのスピードに加え、ツーシーム系の動く球を駆使する「大人の投球」だった。何より、平石監督が「野球に熱い男」と評するハート。先制の2号2ランとバットでも援護した女房役の嶋は「1球1球、魂がこもっていた」と言った。手術明けを考慮して1度登録を抹消されるが「心強い1人が帰ってきてくれた」と指揮官を喜ばせた。

昨年12月に結婚。「よく(プロポーズを)受けてくれたなとも思うんです」。手探りで復活への道のりを歩んでいた時期の自分についてきてくれた1歳上の夫人に感謝は尽きない。「僕のリハビリは、まだ終わってないと思っているので」。さらにチームに貢献する決意を胸に、夫人と約束したウイニングボールを握りしめた。【亀山泰宏】