熊本のお母さん、俺、やったよ~! 広島アドゥワ誠投手(20)が、プロ初の先発勝利を完投で飾った。

母の日にちなんだピンクの特別ユニホームで登板。低めに集める投球でDeNA打線を8安打無四球1失点に抑え、110球で9回を投げきった。チームは開幕戦以来、5度目の挑戦で貯金生活に突入。3位タイに浮上し、上位を追いかける態勢を整えた。

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3人で上がった母の日のお立ち台で、アドゥワは重圧を感じていた。先発初勝利の余韻に浸る余裕はない。決勝打の鈴木が「今日、俺やったよ~」と左手を突き上げた。猛打賞の磯村も同じセリフで続く。最後にマイクが回ってきた。やるしかなかった。「テレビの前のお母さん、俺、やったよ~!」。故郷熊本で見守る母純子さんに向け、思いきり右手を突き上げた。

母に贈る白星だった。少年時代から勉強嫌いを叱られることもなく、存分に好きな野球をさせてくれた。高校は愛媛・松山聖陵で寮生活を送り、寂しい思いをさせてきた。「ユニホームを送ろうと思います」と話していたが、ウイニングボールも贈る。「恩返しができました」とかみしめた。

9回8安打1失点。196センチの長身を器用にたたみ、低め目がけ腕を振った。動く直球でバットの芯を外し、カーブ、チェンジアップで緩急をつけた。スライダーで目先も変えた。無四球完投。佐々岡投手コーチから「イニングの入りで高めに浮いたけど、低めに集めてゴロを打たせた。持ち味が出た」とほめられた。

打席でも必死だった。3点リードの2回1死三塁で右前打。「バットに当たってくれ」と念じた今季初安打がプロ初適時打となった。守っては6回の石川の強い当たりを難なく処理するなど、好フィールディングで自分を救った。

昨季は中継ぎで53試合に登板し、リーグ3連覇を支えた。今季は途中から先発に回り、4試合目で初勝利。アドゥワの好投に導かれたチームは、開幕戦以来5度目の挑戦でついに貯金生活に入った。【村野森】

◆アドゥワ誠(まこと)1998年(平10)10月2日生まれ、熊本県出身。ナイジェリア人の父と日本人の母を持つ。松山聖陵3年夏の甲子園に出場。初戦の2回戦北海戦で完投も1-2でサヨナラ負けを喫する。16年ドラフト5位で広島入り。2年目の昨季1軍デビューし、すべて救援で53試合に登板。今年4月23日中日戦で1軍戦初先発を果たした。196センチ、83キロ。右投げ右打ち。