楽天が今季17度目の逆転勝ちで4月25日以来となる単独首位に浮上した。

6回まで西武今井の前に無安打と沈黙して2点のリードを許したが、7回にジャバリ・ブラッシュ外野手(29)が値千金の14号逆転3ラン。さらに2死満塁から島内が本盗を決めるなど、自在の攻めで昨季6勝19敗と大きく負け越した相手を翻弄(ほんろう)した。

単独首位浮上に「どうでもいいです」と笑って返した平石監督だが、年に1度の盛岡開催で痛快な逆転劇だった。

前回対戦で「令和完封1号」を献上した今井から、7回先頭の浅村が中前へチーム初安打で突破口を開く。ウィーラーの左翼線二塁打でチャンスを拡大し、ブラッシュが内角高め144キロを仕留めた。「盛岡は1年に1回だから、いい1本が打てて良かった。盛岡はいいところだね」。試合後、昨季エンゼルスでチームメートだった大谷が高校時代に160キロをたたき出した球場と聞き、がぜんテンションが上がった。

8回には左翼ポール直撃の2打席連発で勝負を決定づけた。15本塁打、41打点といずれもチームトップの数字でけん引する助っ人砲。強打の秘訣(ひけつ)は、左手にある。右投げ右打ちだが、食事も字を書くのにも専ら左手を使う。巨人坂本勇がそうであるように、普段は繊細な作業をこなす引き手の強さが本業で驚異の弾道を生む。

ブラッシュの1本目の後には、したたかな攻めでたたみかけた。2死満塁フルカウントが続き、西武平井が二塁へけん制球を投げた瞬間、三塁走者の島内が抜群のスタートでホームを陥れた。「あれ、記録はホームスチールになるんですね。初めてです」と笑った島内だが「投げるのを確認していきました。打てないので、何かしら貢献しないと」。開幕から40試合以上「つなぎの4番」を張ってきた男も、5試合連続無安打。ここ2試合は7番だった。打席での苦しみに引きずられることなく、塁上でチームのために集中力を研ぎ澄ませていた。

26勝のうち17度を占める逆転勝ち。今季2試合目の先発塩見が7回をソロ2本で踏みとどまるハイクオリティースタートから生まれたという側面に、ひと味違う価値がある。岸、塩見と頼れる左右の先発が戦列に復帰し、交流戦を前に再加速する。【亀山泰宏】