福岡大・広瀬裕哉外野手(3年=佐賀北)の好守が勝利をもたらした。

9回を終え、0-0。規定により、延長10回からは無死一、二塁で始めるタイブレークとなった。10回はともに無得点。11回表、福岡大が1点を先制。その裏、広瀬は4番井上に代わり、左翼へ守備固めで入った。

11回裏、星槎道都大の攻撃。先頭が送り、1死二、三塁となった。広瀬は「二塁走者がかえると逆転サヨナラ。二塁走者だけはかえさない」と、定位置より数メートル前に守った。池田の打球は頭上を超える当たりだった。すぐに後ろに下がったが「左打者の、ちょんと当てるような当たり。思ったより伸びませんでした」。結果的に助走をつけて捕球できた。そのまま、本塁へワンバウンドのストライク返球。三塁走者の生還を阻止し、併殺で試合終了とした。「サブメンバーなので、勝利に大きく貢献することが、なかなかない。今日は良い経験、思い出になりました」と笑顔で話した。

準備のたまものだ。神宮球場は初めて。しかも、ナイター。照明の見え具合など、確認する時間はなかった。だが、試合中、中堅の宮田からベンチで情報を得ていた。「今日は風がない」、「相手打線は、あまり長打は狙わない。特に、1番打者(池田)の打球はレフト線の方にいく」などなど。それを受け、数メートル前、さらに左翼線寄りに守った。

また、遊撃の三村からは「返球は低めに」と言われていた。守備練習では、正確に送球することを繰り返してきた。日ごろの鍛錬をベースに、試合中のチームメートからの情報、指示を受けたから、完璧な送球が実現した。堀監督からは「準備して、よく刺してくれた」とねぎらわれた。

「やってきたことが自然と体現できました。(試合終了で)みんなが、わーとなって。やっと終わったなと。味わったことがない感覚でした。今日は寝られないかもしれません」と誇らしげだった。控えで、いつもは目立つことはない。そんな広瀬の、たった1つのプレーが神宮を沸かせた。