「記録の達人」が獅子を沈めた。巨人阿部慎之助捕手(40)が5回に3号2ランを放つと、7回には史上42人目の通算350二塁打をマーク。巨人の生え抜きでは川上哲治、長嶋茂雄、王貞治以来4人目。「6番DH」で今季4戦目のスタメンで2打数2安打2打点と活躍、クリーンアップを後ろから支えた。チームも交流戦開幕から3カード連続勝ち越しで、セ・リーグ最上位の3位をキープした。

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記録に一切の興味を示さなかった。阿部が薄暗いメットライフドームの通路を抜け、地上へと続く長い階段を上がる。息を切らしながら「微妙だよね。なんとも言いようがない。すべてにおいて微妙だよね」。ただ、球場駐車場まで届いた自身の応援歌は心地よく聞こえた。6点リードの7回1死一塁。西武粟津の外角シンカーをシャープなスイングで捉え、左中間を真っ二つに破った。史上42人目の350二塁打を涼しい顔で決めた。

1日に到達した史上19人目の通算400号と350二塁打を併せ持つのは、捕手では野村克也以来2人目。5回には小川から今季3号2ランを放ち、自身の記録を更新する史上最多の通算230人斬り。外寄りのスライダーを右翼ポール際に放り込み「風だよ」と無風のドームに風を吹かせる神業? で通算402号とした。

古巣との戦いで躍動した炭谷がまぶしく映った。4月中旬の鹿児島遠征。同じテーブルで豚しゃぶをつついた。FA加入の後輩に「今までの自分の経験を信じてやればいい。俺が出来なかったこと(移籍)を銀ちゃんはやっている。それだけでも十分すごいと思うよ」と熱っぽく語りかけた。経験を踏まえたアドバイスとして「巨人は打てる捕手がレギュラーをつかむ」とも伝えた。小林、大城を含めた正捕手争いに刺激を与えつつ、自身もバックアップ態勢を整える。

15年目の交流戦で気がつけば、セ・リーグ打者では唯一の交流戦60発に達した。ここでも記録は右から左に流して「全チームに勝ち越せるように、みんなでやっていくしかない」とだけ言った。今日14日からは北海道に舞台を移し、首位日本ハムに挑む。ベテラン阿部が存在感とオーラで、少し後ろからチームを束ねる。【為田聡史】