ソフトバンク15年ドラフト1位の高橋純平投手(22)がプロ4年目で、念願の1勝目を挙げた。今季12試合目、この日も1点ビハインドでの出番だった。7回1死一、三塁の厳しい場面で登場し、2球で大田を遊併殺に仕留めた。8回2死二、三塁では、中島をフォークで空振り三振。グラブをパ~ン! とたたいた。この日は札幌白石高校のブラスバンド演奏が球場を盛り上げた。高校野球のような雰囲気の札幌ドームで、県岐阜商時代ドラフトの目玉だったころのような輝きを放った。

「ここで点を取られるわけにはいかないとギアが上がった。9回2死まで負けていたので勝ち星は予想していなかった。内川さん、上林さんに感謝です」と、笑顔で答えた。昨年は1軍出場なし。投球フォームを4回変えるなどもがき続けてきた。3年間で1軍はわずか1試合。「今思えば甘さがあったと思うが、圧倒的に技術が追いついていなかった」と振り返った。

母奈穂子さんからは「思い切りやってダメなら、岐阜に帰っておいで」と言われ、父康二さんからは「とにかく頑張れ」と言われ続けた。そんな両親の潤滑油でもあり、遠い福岡でファーム暮らしだった高橋純の気持ちを支えてきたのが、小学6年から飼ってきた愛犬ゆう。小さな柴犬のメスで、常に家族の話題の中心だった。

ゆうは6月はじめに膵炎(すいえん)のため13歳で亡くなった。「悲しみは大きいですが、5月下旬の2軍の名古屋遠征時に、実家で会うこともできた。母ともゆうが守ってくれているんだねと話します。僕の中では今は守り神ですね」。ウイニングボールは、ゆうの墓前に届ける。心身ともに成長した高橋純が、大事な終盤戦では、さらに頼れる存在になりそうだ。【石橋隆雄】