昭和に産声を上げた球宴も平成へと継がれ、新たに令和の時代に突入した。オールスターに名を連ねる巨星たちが推す、まだ無名の星とは。「令和へのプラスワン」で近未来に球界を背負って立つ逸材を、先取りで紹介してもらった。【プロ野球取材班】

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ソフトバンク千賀がプロ人生を歩み始めた11年、2軍公式戦にも登板しなかった右腕が球界屈指まで登頂すると誰が想像しただろうか。シンデレラストーリーを地でいく男が新時代に推した。

「純平(高橋)です。素材は僕に似たところもある。直球ももっと強くなるだろうし、あとは(野球の)脳みそがどれだけ育つか」

15年ドラ1右腕は、昨季まで1試合の登板だけ。だが今季は中継ぎで初勝利から2日連続で勝利し、開花の予感を漂わせている。

同じ系統の球筋をミットに受ける甲斐は、新たな名前を挙げる。「杉山ですね。受けて、球がえぐい」。今年のドラフト2位。193センチから繰り出す直球は春季キャンプを見た評論家の間でも高評価だった。

育成出身が堂々とセンターラインを固めるソフトバンクと同様に、高卒選手の育成にたけた日本ハムも逸材が転がっている。西川は田中瑛に「右の本格派で、強いまっすぐと変化球を武器に、将来が非常に楽しみ」とコメントを寄せ、近藤も浅間を「総合力が高い。足も速いし打撃もいい、肩も強い」と認める。

すでに1軍で芽吹き始めている星も多い。広島床田は「遠藤はすごい投手になるかも。本格派でフォームがきれいで、球の質もいい。物おじもしない。マエケンさんみたいにならないですかね」とデビューから10戦連続無失点に抑えた2年目右腕を評した。大瀬良もアドゥワを「足も速いし、バネもあるし、器用。高い身体能力を持ち、今後体が大きくなったらとんでもない選手になる」とイチ押しした。

来日1年目の助っ人も、日本のプロスペクトに光を感じる。阪神ジョンソンは150キロ超の直球を持つ才木と望月に「何がすごいというより、将来性がすごい」と感じる。自身も12年のMLBドラフトの1巡目指名。同じ1巡目には今年のメジャー球宴に出場し、本塁打を放ったレンジャーズのギャロもいる。日米の原石を肌で知る。

異色の球歴も、スター性を研磨する。楽天美馬は「菅原と、歳がいっているけど森原(笑)。ポテンシャルが半端ない。直球だけで抑えられるくらい。本当にうらやましい」。森原は26歳シーズンの遅咲きでプロ入りし、菅原は「何か嫌になって」と大学2年途中から1年以上野球を離れていたが心機一転、4年から再開した。苦労人はいつの時代も日本人の心を打つ。

大砲は、ナチュラルに大砲候補に目を向ける。DeNA筒香は「うちの近未来のスター候補なら細川ですね。清宮、村上と同じくらいの可能性を持っている。大きく育ってほしい」と期待する。高卒ルーキーの昨季、初打席初本塁打を放った後輩は後継候補となる。

黄金世代も当然、職人たちの心をつかんでいる。オリックス山本は1学年下の日本ハム清宮に「あれだけ注目されるのはなかなかない」。ヤクルト中村も「ベタだけどドラフト1位で入ってきた根尾くん、藤原くん、吉田くん」と王道を行く。オリックス吉田正も、自軍のドラフト1位太田に「キャンプの時、ちょっと見てスイングが力強くてしっかり振れている印象でした」と太鼓判を押した。

世代のトップランナーに、やや隠れながらも早々と1軍の舞台に立つ者もいる。中日京田は「ルーキー捕手の石橋は、高卒1年目ながらキャプテンみたい」と円陣の声出しに圧倒され、ロッテ荻野も小島に「コントロールもよくて大崩れしない。ゲームを作れる投手なので、今後が楽しみ」と大卒左腕のクオリティー・スタート能力を評価する。

自然と同僚や後輩を推薦する声が多い中、他チームの選手に着目した1票は価値がある。西武秋山は理路整然と話した。「ここ5年くらいで僕の最多安打記録は誰かに抜かれると思っています。イチローさんの記録をマートンが抜いたとき、その後に僕が抜くなんて誰も思っていなかったと思う。チーム事情もあると思いますが、1番に定着しながら、相手のマークが強くなる前にバンバンと打って数を稼いでいければ、見えてくる。可能性があると思って見ていたのは巨人の吉川尚輝かな」。腰痛で離脱するまで11試合で打率3割9分。机上の計算だが143試合に出れば、秋山が持つ216安打に迫る208安打ペースだった。

発掘はプロ球界に限らない。阪神近本は大阪ガスの後輩、小深田大翔内野手を推挙した。「総合的に野球スキルが高いので注目してほしい」。168センチの小兵だが俊足巧打の今秋ドラフト候補。「足の速さは僕の方が負けてませんけど」とのコメントに意地がかいま見える。

巨人岡本は質問を受け、智弁学園3年時を思い浮かべた。才能輝く1年生がいた。現東洋大3年の149キロ右腕、村上頌樹投手だ。「真っすぐのスピン量がすごかった。ホップ系です。右、左打者に関係なく、チェンジアップでストライクも取れる。今は140キロ後半を投げるみたいですから、あの質でそのスピードなら、プロに入っても、簡単には打てないんじゃないかと思います」と想像する。

数々の推薦状の正解が出るのは今季中か、はたまた数年後か。誰も知るよしがない。ただ最高峰の祭典に立つプロの目にかなう、とびきりの才能を備えていることだけは確かだ。