北の大地で大きな1歩を踏み出した。楽天ドラフト4位ルーキーの弓削隼人投手(25)がプロ初勝利を散発2安打の初完封で飾った。開幕2カード目で先発後の2軍調整期間で力強さを取り戻し、チームにとっても今季94試合目で完封1号。若き大型左腕が、10連戦の初戦で最高の勢いをつけた。

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弓削の野球人生は悔しさを糧にして紡がれてきた。栃木・佐野日大高でエースになったのは3年春。中日京田と同期の日大でも4年になって頭角を現した。「社会人(SUBARU)も入った時は全然ダメ。最初からうまくいった記憶がないですね」と振り返る。

この1勝への歩みも重なる。開幕6試合目に先発も、初勝利まであとアウト2つで降板。「プロの壁なのかな」。翌日に登録を抹消され、2日後に迫っていた25歳の誕生日を自ら祝うこともできなかった。2軍で行動を起こした。「1度、自分のやり方でやらせて下さい」。トレーニングコーチにお願いして、社会人時代の練習に回帰した。プロ入り後、上半身と下半身で日によって分けていたウエートトレーニング。1日の中で全身を鍛える形に戻し、投球感覚のムラが消えた。高校球児のように走り込み、SUBARUの関係者に送ってもらった当時の自分の映像を何度も見返すことで、軸となる強い直球がよみがえってきた。この日、2回に147キロが出た。

カットボールとスライダーに頼りがちだった配球も見直した。右打者からは逃げていく軌道になるフォークとチェンジアップの精度に磨きをかけ、カウント球として使えるレベルに昇華。リードしたドラフト2位ルーキーの太田も「真っすぐが力強くなって、変化球も生きてくる。ファームの時も含めて、今日が一番うまくいきました」とうなずいた。同じ日本ハム相手に目前で初勝利を逃してから約4カ月。「初登板の借りを返せて良かったです」。悔しさをバネに壁を乗り越えた。【亀山泰宏】