広島野村祐輔投手(30)が、6回4安打1失点で今季5勝目を挙げた。初回に巨人に1点を先制された後は球威が戻った直球を軸に持ち球を駆使して的を絞らせず、代打が送られた7回に打線が一挙4点を勝ち越した。1軍復帰後は連勝。チームも首位巨人に連勝して、最大12ゲーム差から7月2日以来の4ゲーム差まで接近。後半戦は12勝3敗と強さが戻ってきた。

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根気強く両サイドを突き、守備を信じて打たせて取った。野村の投球スタイルで巨人打線を封じた。真っすぐを軸に、カーブやスライダーなど横の変化だけでなく、チェンジアップで縦の変化もつけた。的を絞らせず、味方の援護を待った。同点の7回、自身の代打磯村のヒットエンドランで勝ち越し点が生まれた。

「先制されたが、そこから粘ることができ、しっかりとゲームが作れたことが良かったです。序盤は球が少し高かったですが、徐々に修正して低めにもしっかり投げられることができました」

立ち上がりはフォームがばらついた。リリース後に体が一塁側に流れ、球もばらついた。1回に丸の適時二塁打で先制点を許したが、最少失点でしのいだ。2回以降はきっちりと修正。走者を出しても落ち着いていた。3回は一塁走者をけん制で刺し、4回はファウルフライを自らつかんだ。

7月25日に再昇格するまで約1カ月半、2軍でもがいた。不振の原因は直球の質の低下だった。両サイドに投げ分けられても痛打され、変化球も見送られる。悪循環が2軍調整を招いた。150キロの速球を投げられる投手ではなく「質が大事。140キロでも打者に速いと感じさせられる」というスタイルを信条とするだけに、球質は投球の土台となる。

2軍で体の使い方を見つめ直し、走り込んできた。コーチだけでなく、先輩捕手の厳しい助言も胸に刻んだ。「悔しかったですし、チームの力になれなくて残念だった。(後半戦は)自分ができることをやりたい」。覚悟を胸に抱いてマウンドに上がっている。

5勝目を手にし、チームを連勝に導いた。後半戦のキーマンに野村の名前を挙げた緒方監督も「立ち上がりバランスが悪くて球が来ていなかったけど、修正できた。立ち直ってくれたから試合が締まった」とたたえた。チームとともに反攻に燃える右腕が、8月を白星発進させた。【前原淳】

▽広島会沢(野村と先発バッテリー)「持ち味の低めを意識して3回以降投げてくれた」

▽広島佐々岡投手コーチ(先発野村に)「真っすぐの切れが良かったし、切れもあった。シュート回転していたのが、3回以降修正してくれた。右、左関係なく内角を攻めたのも大きい」