阪神の名二塁手だった鎌田実氏が、1日に兵庫県内の病院で、肺がんのため死去していたことが2日、分かった。80歳だった。通夜・告別式は親族のみで行う。

兵庫県三原郡(現南あわじ市)出身で、洲本から57年に阪神入団。遊撃手の吉田義男、三塁手の三宅秀史と史上最強の内野陣を組んで、62年はリーグ優勝に貢献した。

63年米大リーグデトロイト・タイガースのキャンプで指導を受けた「バックハンドトスの名人」と称された。短い距離ではなく、7、8メートル離れてもバックトスする、卓越した技量だった。

生前の本人は「肘を固定し、手首はきかさない。ボールを投げる距離が、下から放るには届かないし遠い、握って投げるには遅い。それがバックハンドトスが生まれた理由です」と明かしていた。

また、ジャンピングスローなど、華麗な守備でファンを魅了した。「我々の時代は三遊間コンビが華。個性が強く、みせるプレーも取り込まないといけないという、藤村(富美男)さんの自然な教えでした」とも話した。

67年に近鉄移籍後、70年に阪神に復帰し、72年に現役引退した。両軍でコーチを経験。引退後は阪神戦を中心に解説者として活躍し、また、野球振興への思いも強かった。

近年は神戸大学海事科学部の軟式野球部監督としてボランティアで指導、子供たちにも教えていた。職人肌のバイプレーヤーが静かにこの世を去った。

◆鎌田実(かまた・みのる)1939年(昭14)3月8日生まれ、兵庫県出身。洲本から57年に阪神入団。3年目の59年からレギュラー二塁手となり、遊撃手の吉田義男とともに二遊間を形成。67年に近鉄に移籍し、70年に阪神に復帰、72年限りで引退した。引退後は近鉄コーチを務め、野球評論家として活躍。通算1482試合、1041安打、24本塁打、264打点、84盗塁、打率2割3分4厘。177センチ、75キロ。右投げ右打ち。