巨人の若き主砲が歴史的逆転勝ちをもたらした。4番岡本和真内野手(23)が2打席連続アーチで最大7点差を追いつき、延長10回の亀井のサヨナラ犠飛へとつなげた。

4点差の6回に2戦連続の20号ソロで追い上げムードを高めると、8回には21号同点3ラン。7点差の4回には、坂本勇人内野手(30)が9年ぶりの大台となる30号ソロでのろしを上げた。球団では06年以来13年ぶりの7点差以上からの逆転勝利。後半戦初の連勝で首位を守った。

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岡本が右手を挙げてバットをポーンと放り投げた。大歓声より先に確信した。3点を追う8回1死一、二塁。ヤクルト近藤の3球目、143キロ外角直球を捉えた。6回の20号に続く、2打席連続の4番の21号同点3ラン。最大7点差から試合を振り出しに戻す、起死回生の一撃。総立ちの自軍ベンチを横目にダイヤモンドへと駆けだした。

暗やみをさまよう若き主砲のライバルは、己の中に存在する。昨季は史上最年少で「3割30本100打点」を達成。4番を任され全うした。残像は今も鮮明に残る。「去年1年で何かを成し遂げたわけじゃない。でも、1つの形としては意識の中にある」と昨季の自分が基準になっていることは否定しない。今季ここまでの打率2割5分6厘。得点圏では2割2分5厘。打点59。昨季の数字とにらみ合いは重圧としてのしかかった。

球団史上13年ぶりの大逆転勝利をたぐり寄せた1発で“昨季の自分”にもリードをした。今季1号、10号、20号はいずれも昨季のペースより後れを取った。だが、21号は昨季の8月10日より1日上回り、試合数でも2試合先取りした。「打席に入る前から、今までにないぐらいの大きな歓声でアドレナリンが出た。打てる気がした。久々にちゃんと捉えられた」と重圧を力に変えた。だから今は「個人的な部分に意識はない。今できることを続けていきたい」と“未来の自分”に目を向ける。

前夜の延長引き分け、ここまでの不振、昨季の躍進のすべてに価値をもたらす大仕事をやってのけた。原監督も「素晴らしい場面で2本のホームランを打った。2本目は特に、私も鳥肌が立つようなね。これがプロの技。今までのいろいろな悔しい思いを含めて、エネルギーに変えた1本」とたたえた。殊勲の主砲は「まだ僕の借金は多い。また頑張ります」。大混戦のペナントを勇ましく走り切る。【為田聡史】