阪神が来季の打撃コーチとしてヤクルト2軍打撃コーチを退団した北川博敏氏(47)を招へいすることが16日、分かった。

94年ドラフト2位で阪神に入団した北川氏は、移籍先の近鉄で01年、代打逆転サヨナラ満塁本塁打で優勝を決めた勝負強さが持ち味。19年ぶりの古巣復帰で「いてまえ魂」を注ぎ込む。元中日2軍監督の井上一樹氏(48=野球評論家)も1軍打撃コーチに内定。左右の打撃コーチ補強で打線強化を図る。

   ◇   ◇   ◇

矢野阪神が打撃部門のさらなるてこ入れに乗り出す。この日、ヤクルトから契約満了による退団が発表された北川氏を打撃コーチとして呼び寄せることが判明した。

北川氏は94年ドラフト2位で阪神に入団。近鉄、オリックスを経て12年の現役引退後はオリックスの1、2軍で打撃コーチを務め、17年から今季までヤクルトで2軍打撃部門を担当。高卒2年目で36本塁打96打点をマークした大砲村上の下積み期間をサポートした。6年の打撃指導ノウハウは貴重な財産だ。

プロ野球史上初の劇的アーチを思い出す野球ファンも多い。阪神時代の95年にはジュニア球宴でMVPを獲得したが、打撃が開花したのは近鉄移籍後。タフィ・ローズ、中村紀らと「いてまえ打線」の一角を形成した。加入1年目の01年、代打逆転サヨナラ満塁本塁打で優勝を決めたのは今も語り草だ。04年の近鉄ラストイヤーはシーズン最終戦で20号を放ち、近鉄選手として最後の本塁打、打点をマーク。遅咲きの右打ちスラッガーは節目節目で勝負強さを発揮した。球史に名を残す男が今度は猛虎に「いてまえ魂」を注入する。

来季優勝するために、貧打解消は喫緊の課題だ。今季のチーム総得点538点はリーグ6位。本塁打数94本もリーグ5位と低調だった。満塁や得点圏のチャンスでの勝負弱さも目立っただけに、北川氏の代名詞でもある勝負強さを学びたい。球団は中日で2軍監督や打撃コーチを務めた井上氏の1軍打撃コーチ招へいも決定。左右のコーチ陣の“W補強”から、ドラスチックな改革を推し進める。

現役時代から「アンパンマン」の愛称で知られる北川氏は、阪神で98年から3年間、矢野監督と同じ捕手のポジションでプレー。00年以来、19年ぶりにタテジマに袖を通す。明朗で、情熱がある指導者として定評がある。大山、北條、中谷ら、さらなる飛躍が求められる右打ちの若手にとって、大きなプラスに働きそうだ。

◆代打逆転サヨナラ満塁優勝決定本塁打 01年9月26日、近鉄がシーズン最終戦でオリックスと対戦(大阪ドーム)。優勝マジック1の近鉄は3点ビハインドで9回へ。無死満塁の好機を作ると梨田昌孝監督が「今年のアイツは何かをやる」と、2日前に本塁打を放った北川博敏を代打に指名。北川はオリックス守護神大久保勝信のスライダーを完璧にとらえ、バックスクリーン左へ運んだ。「代打逆転サヨナラ満塁本塁打」は6人目だったが、「釣銭なし(1点差勝ち)」は45年ぶり2人目。プロ野球史上初めて代打逆転サヨナラ満塁弾で優勝が決まった。

◆北川博敏(きたがわ・ひろとし)1972年(昭47)5月27日生まれ、兵庫県出身。大宮東から日大を経て、94年ドラフト2位で阪神入り。01年トレードで近鉄へ移籍。同年9月26日オリックス戦で「代打逆転サヨナラ満塁優勝決定本塁打」を放つ。05年から合併球団オリックスに在籍。12年引退。通算1264試合、1076安打、102本塁打、536打点、打率2割7分6厘。現役時代は180センチ、95キロ。右投げ右打ち。13~14年、16年オリックス、17年からヤクルトでコーチ。