ソフトバンクが「SMBC日本シリーズ2019」第2戦で巨人に連勝。ヤフオクドームでの日本シリーズ連勝記録を14に伸ばした。令和のサブマリン・高橋礼投手(23)が7回を1安打無失点と好投し、シリーズ初先発で初勝利。巨人メルセデスとの投手戦で一歩も譲らず、終盤の打線爆発を呼び込んだ。

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5回までは完全投球だった。高橋礼が下手から巨人打線を手玉に取った。「楽しむということがすごくできた。直球も変化球もしっかりと腕を振って投げることができた」。6回、先頭若林に死球を与え、1死二塁のピンチを背負ったが、重信を二塁ベースすぐ横の遊直に打ち取り、二塁走者が戻れず併殺。岡本にこの試合唯一の安打を許した7回2死一、三塁では阿部に「内角へ力強く投げる」と内角直球で勝負し三ゴロに仕留めた。

今季、NPBからスピードアップ賞に選ばれた。平均投球間隔(無走者時)10秒0はパ・リーグで最短。同じく9秒2の巨人メルセデスとのテンポのよい投手戦だった。「相手のテンポに乗ったところもあるが、自分もテンポを武器にここまで戦ってきたので」と、テンポにこだわり投げ続け、7回の松田宣の3ランで勝ち投手となった。

CSファーストSでは3戦目だったが、日本シリーズでは2戦目を任せられた。工藤監督は「シーズンで頑張ってきたので」と起用理由を明かした。2年目の今季は開幕ローテーション5、6番目の立場からチーム2位の12勝を挙げ6敗と6つの貯金をつくった。「新人王」という言葉が高橋礼を成長させた。中継ぎで1軍を経験した昨季、12試合、30回で終えた。新人王資格の30イニング以内を首脳陣が考慮したのかと思われたが、倉野投手コーチは「まったくの偶然で、そこまで考えていなかった」と明かす。資格が残ったことで、高橋礼は中継ぎのルーキー甲斐野(65試合2勝5敗8セーブ26ホールド)との熾烈(しれつ)な新人王争いを演じた。高橋礼は「新人王というものが、モチベーションになったのは確か」と話す。偶然が重なり高橋礼は、チームの先発の柱に成長した。「こういう大きな舞台でアンダースローからこういうボールが投げられるんだということを見せられたことはすごくよかった」。侍ジャパンにも選出されたサブマリンが、多くの野球ファンが注目する中で、その力を思う存分に発揮した。【石橋隆雄】

▽ソフトバンク工藤監督(高橋礼の好投に)「大記録をやるかもしれないと思って見ていた。リズムがよく制球もよかった。今年の集大成と言ってもいい投球を、この大舞台でしてくれた。相手に的を絞らせない本当にパーフェクトな投球だった」

▼高橋礼が7回2死まで無安打に抑え、シリーズ初勝利。先発投手の初回からの無安打は07年第5戦山井(中日)の8回が記録で、高橋礼の6回2/3は5位。チームでは11年<1>戦和田の6回1/3を抜いて最長となった。6回無死から若林に死球を与えるまで走者を許さず、シリーズで5回以上完全は14年<2>戦武田(ソフトバンク=5回2/3)以来7人目。

▼5回裏2死から打った松田宣の左安が両軍を通じて初安打。これまで初安打が最も遅かったのは、ヤクルトと西武が対戦した93年第4戦で鈴木健(西武)が記録した4回表2死。4回終了時点で両軍無安打はシリーズ史上初めてだった。