オーストラリアを侮ることなかれ-。侍ジャパン稲葉篤紀監督(47)はプレミア12のスーパーラウンド(SR)初戦となる11日のオーストラリア戦(ZOZOマリン)に向け、かぶとの緒を締めた。

SR進出の6カ国で世界ランク1位の日本に対し、同国は最も低い7位。通算対戦成績でも圧倒しているが、04年アテネオリンピック(五輪)で2敗を喫した歴史もある。指揮官は世界一へ過去の教訓を胸に刻んだ。

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稲葉監督は、日本が負った15年前の体験を現在に置換した。SRの初戦がオーストラリア戦に決定。1次ラウンドを1勝2敗のTQB(得失点率差)で何とか勝ち上がってきた。日本は99年以降、プロが参加してからの対戦は通算12勝3敗。最近は9連勝中と圧倒的有利だ。米国(12日)メキシコ(13日)韓国(16日)からすれば、世界一への初陣へ比較的、くみしやすい相手ともいえる。そんな観念は指揮官にはなかった。

「アテネ五輪でやられている。(出場した)金子ヘッドもそういう印象があり、やはり手ごわいし、いいチームだという話をした」

04年アテネ五輪。1度ならずも2度も敗れた。1次ラウンドで4-9。警戒しながら戦った準決勝は、後に阪神でプレーしたオクスプリングと当時阪神でJFKの一角として隆盛を極めたウィリアムスに0-1の完封リレーを食らった。悲願の金メダルが夢と散った相手だ。

警戒心を高める一方で、相手は日本マークが緩まるかもしれない。

今大会はアメリカ大陸の最上位1カ国、アジア・オセアニアの最上位1カ国に東京五輪出場権が与えられる。オーストラリアとともに韓国、台湾のアジア・オセアニア勢は開催国で出場権のある日本よりも、同地域のライバルに勝つことで優位に立てる。特に韓国は、10月のアジア選手権でまさかの4位に終わり、来年3月の大陸間最終予選(台湾)の出場権を失った。プレミア12は東京五輪出場へのラストチャンス。宿敵日本だけに目を向けられている状況ではない。

複雑な各国事情が絡むが、侍ジャパンは一戦必勝だ。稲葉監督は結果次第で消化試合となる可能性のある16日の韓国戦に「どのみち韓国と対戦するし、倒さなければならない相手。(16日までに決勝進出決定が)それが理想だけど、どうなるか分からないので一戦必勝ということ」と目前の戦いに集中した。台湾から帰国し、成田空港では300人のファンに出迎えられた。世界一へ、日本での歩みが始まる。【広重竜太郎】