直撃するまで、帰れま10-。日本ハムの秋季キャンプは9日、最終クールがスタート。小笠原道大ヘッド兼打撃コーチ(46)が提案した打撃強化メニューで、スイッチヒッター杉谷拳士内野手(28)がエンターテイナーぶりを発揮した。

ロングティーで、本塁付近から外野に設置した2本のポールに当てたら練習終了というルール。左右両打席で見事に命中させて喝采を浴びた。

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空が赤く染まってきた午後4時20分、本塁付近でバットを振っていた杉谷が「やった~!!」という雄たけびとともに、拳を天に突き上げた。午後4時から始まった一風、変わったロングティー。横一列に6人が並び、約80メートル先の中堅付近に立てられた高さ3・5メートル、直径15センチの2本のポールめがけて、一斉にボールを打ち始めた。右半分の選手は右のポールへ、左半分の選手は左へ。的にライナーで打球を当てた選手から、練習終了とあって、6人の目の色が変わった。

1人抜け、2人抜け、3人目…。スイッチヒッターの杉谷は「右の方が感覚が良かったので、先に当ててやろうと思っていた」。右打ちの10スイング目で見事ヒットし、小躍りしたが、すぐさまコーチ陣から「お前はスイッチだから、左でも打て」と声が飛び「え…?」と絶句。気を取り直し、約10分後に左打ちでもポールに打球を当て「右でも、左でも当てるなんて、勝負強いな。普通は、簡単に当たらない。みんなの思いがボールに詰まっていたんですかね」と自画自賛だ。

マンネリ化を防ぐため、小笠原ヘッド兼打撃コーチが提案し、通常の強化メニューに遊び心を加えた。ポールは、スタッフがホームセンターで購入した材料で作製。ライナーで飛ばす強いスイングが必要で、的を作ることで集中力を高める狙いがあった。厳しいだけでなく、楽しみながら取り組める。「めっちゃ、面白かった」とグラウンドを後にする杉谷の顔は、生き生きと輝いていた。【中島宙恵】