「原のメス」でドライチ右腕がサイドスローに転向だ。巨人原辰徳監督(61)が9日、宮崎総合運動公園で行われる秋季キャンプで鍬原拓也投手(23)のフォームを改造した。上手投げの即戦力として17年ドラフト1位で入団したが2年間で1勝。今季は一時クローザー候補にも挙がったが、15試合の登板に終わった。

崖っぷちの右腕に「小さな固定観念で野球をやっていては」と歩み寄った。ブルペンで70球を過ぎた頃、腕の位置を下げるようにアドバイス。高校入学まではサイドスローだった右腕の制球が定まると「カットボール」「シンカー」と次々変化球もリクエストした。

ブルペンの空気が一変した頃には「今入った新入団選手だ。戦力になるかもしれない。契約金は3年前に払ったからないけど」と冗談交じりで歓迎。「名前も変えるか、クワバタケに」と新たな投手として生まれ変わるきっかけを与えた。鍬原は「2年間結果が出ていない。変えてみてどうなのかやってみたい」と新フォームで勝負する考えだ。

かつては原監督の恩師で元監督の藤田元司氏が、のちの20勝投手、斎藤雅樹氏をサイドスローに転向させた例もある。今季巨人のブルペン陣に不在のタイプでチャンスは広がる。さらに指揮官は帽子のかぶり方にも言及。「深くかぶれと。目は見えないぐらいでちょうどいい。口は締める」と付け加えた。マウンド上では相手を威圧する強さが必要。優しさでは生き抜けない、プロの世界の心得を説いた。【前田祐輔】