阪神ナインの原点、足跡をたどる「猛虎のルーツ」。第1回は今季リリーフでフル回転した阪神島本浩也投手(26)です。福知山成美(京都)時代は、部内の不祥事で最後の夏にプレーできないなど苦難の連続でした。恩師の田所孝二監督(59=現岐阜第一監督)が、プロへの道を切り開いた不屈の素顔を明かしてくれました。

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「野球してる僕らからしたら、もう普通の子がプロになったみたいでね」。田所監督は目を細め、次々に思い出話をしてくれた。島本の1学年後輩にはDeNA桑原がいる。ガツガツタイプの桑原に比べ、島本は「欲がないみたいに見えた」と振り返る。最初の印象は「鉛筆みたい」。中学2年時のタイガースカップで偶然見た島本は、小さくて細かった。それでもコントロールの良さは目を引くものがあったという。

「忙しいからメール送れませんわー、ぐらいなってくれたらええんやけど」。田所監督はうれしそうに携帯画面をのぞき込んだ。激励のメールを島本に送ると、今でもすぐに返信が来るという。「どこで挫折してもあかんかったやろうね。中学校も高校もプロも全部つながって。そう考えてたら、普通の子でもちゃんとやってたら、プロになれるんだという感じがします」。鉛筆のような少年がプロで活躍する姿を、心から喜んでいた。【磯綾乃】

◆島本浩也(しまもと・ひろや)1993年(平5)2月14日生まれ、奈良県出身。福知山成美から10年育成ドラフト2位で阪神入団。14年オフに支配下登録への昇格を果たした。今年10月下旬に左肘をクリーニング手術。年内のキャッチボール再開を目指している。176センチ、73キロ。左投げ左打ち。