阪神島本浩也投手(26)が4日、兵庫・西宮市の球団事務所で契約更改交渉を行い、今季850万から2850万円増の年俸3700万円で一発サインした。昨季の1試合からチーム、自己とも最多となる63試合と登板数を大きく増やし、防御率1・67の安定感でブルペンを支えた。昇給率は球団投手史上2位の335%。育成契約で年俸300万円からスタートしたシンデレラ左腕は、10年目の来季「勝利の方程式」入りを狙う。(金額は推定)

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虎のシンデレラストーリーだ。リーグ最高のチーム救援防御率2・70の中継ぎ陣を支えた島本は「思ったより良かったのでビックリしました」と笑みをこぼした。335%アップの年俸3700万円。17年オフの桑原の463%に次ぐ、球団投手史上2位の昇給率を勝ち取った。

「今年ダメだったら終わり、くらいの気持ちだった」と振り返った今季、一気に階段を駆け上がった。昨季1試合の左腕が、チーム最多の63試合を投げて4勝0敗1セーブ11ホールドで、防御率1・67と飛躍した。決して大きくない176センチの体を目いっぱいに使った躍動感ある投っぷりと、決め球のフォークでピンチの芽をつんだ。結果で徐々に信頼を得てシーズン終盤は大事な場面での登板も増えた。8、9月は21試合に登板して失点、自責ともに0と期待に応えた。

11年に年俸300万円の背番号3桁でスタートしたプロ生活。育成契約で入団した高卒投手では球団で初めて支配下選手登録されたが、2桁背番号を勝ち取るまで4年を要した。「育成の時があったから。あの時より苦しいことってない」。昨季はほとんどをファームで過ごしたが、当時の矢野2軍監督に才能を見いだされ、ファーム日本一にも貢献した。

恩を返そうと腕を振った。プロ初セーブを挙げる約1カ月前の5月8日ヤクルト戦(神宮)。2点リードの延長12回に登板して同点に追いつかれ、救援失敗。失意の試合後、矢野監督から「お前のせいじゃない」と連絡を受けた。「そこから『もっと頑張らないといけない』なと。恩返ししようという風に、強く思いました」。指揮官の言葉が、力となった。

「勝利の方程式」入りを目指す来季へ、課題は明白だ。今季左打者の被打率は2割2分5厘で右打者(1割8分6厘)よりも打ち込まれた。「左バッターを抑えないと(自分の)いる意味がない」。フォークなど変化球に磨きをかけ、左対左の強みを生かす。10月下旬にクリーニング手術を受けた左肘も順調に回復。この日からネットスローも再開し、春季キャンプに照準を合わせる。「1年だけで終わらず、来年はまた60試合以上投げて、ホールド数も倍以上に増やしていきたい」。育成の星のシンデレラ物語はまだ、序章にすぎない。【奥田隼人】

阪神谷本球団副社長兼本部長(島本の契約更改交渉について)「彼がいなかったら大変なことになっていましたので。評価させてもらった。育成出身ということもあり、矢野阪神1年目の象徴のような選手で、周りの若い選手にも励みになると思います」

◆島本浩也(しまもと・ひろや)1993年(平5)2月14日生まれ、奈良県出身。福知山成美から10年育成ドラフト2位で阪神入団。14年オフに支配下登録された。今年10月下旬に左肘をクリーニング手術。年内のキャッチボール再開を目指している。176センチ、73キロ。左投げ左打ち。

◆育成ドラフト入団選手の大幅昇給 阪神では島本の来季年俸3700万円が最高額となった。他球団ではこれまで、育成ドラフト入団し年俸1億円を超えた選手は3人。山口鉄也(巨人)は入団時06年の240万円から、14~17年に3億2000万円へとシンデレラストーリーを描いた。千賀滉大(ソフトバンク)は11年の270万円から今季1億6000万円。西野勇士(ロッテ)は09年240万円から16年には1億円に乗せた。