来季の覇権奪回を目指す日本ハムは、1軍首脳陣に新たな顔ぶれが加わる。「新任コーチに聞く」と題し、3回連載で紹介する。

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現役引退後に指導者としてBC石川に派遣されていた日本ハム武田勝投手コーチ(41)は、4年ぶりのチーム復帰。ブランクを感じさせず、表情を変えずに言った。「選手にとって入浴剤みたいな存在になってあげたら。『あ~気持ちいい』みたいな癒やし担当で。『オアシス武田』と言われるように頑張ります」。笑いを交えながら明かした指導者としての理想像。現役時代の体験談が、ベースにある。

日本ハム入団時から指導を仰いできた厚沢投手コーチが、お手本だ。「何でも相談できた存在で、明確なヒントをくれた。決して、答えではなくて、自分で考えさせてくれた」。考えることが、成長を促進させると気づかせてくれたのが「オアシス厚沢」だった。

社会人時代の経験も大きい。所属したシダックスには野村克也監督(84)がいた。「1を言って、9を気づかせる。そう言われていた。指導者目線で考えると、より深みが増した。野球の年代とか時期に関係なく、一緒なんだと気づかされました」。野村監督の言葉を体現していたのが厚沢投手コーチ。目指す指導者像は監督を務めたBC石川でもイメージしやすかった。

そこに、個性をプラスしていく。「自分らしさも出しながら、今の時代にあったコーチングをしてあげたい」。沖縄・国頭での秋季キャンプでは、あえてボークを犯す練習を導入した。逆転の発想で、ルールの範囲を体に覚えさせる練習。「臨機応変な判断力も磨ける」と遊び心を加えて真理に迫る取り組みを行った。

ベースカバーやバント処理なども徹底的に反復練習した。今季は、その部分のミスが失点につながるケースも多く、投手陣の共通課題となっている。地味で単調になりやすい取り組みだけに「選手も飽きると思うので、集中力を持続するために遊び心が必要。メリハリもコーチの仕事」と自覚する。

現役時代はダルビッシュとともに左右のWエースとして活躍した。「ダルが勝った時は、続こう。負けた時は、ダルの分まで頑張ろうと思っていた。そういう見えない信頼関係が投手に必要。特に先発陣は。早く、そこに気づいていただきたい。チームワークは1週間の投手の仕事を効率よく渡して、それが1年間続くかという話。みんなで分担しながらやっていくのが、1軍の投手の仕事です」。厳しい世界に潤いを与えながら、最強投手陣を構築していく。【木下大輔】