日本プロ野球は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて3月20日からのシーズン開幕を延期することを9日、決定した。Jリーグと行った第2回の対策連絡会議で専門家から感染拡大傾向が続き、感染予防への球場の準備態勢が必要であることから延期を提言された。その後の12球団の代表者会議で延期を決め、12日にも日程再編の代表者会議を再度、行うことを決めた。斉藤コミッショナーは4月中の開幕を希望したが、五輪イヤーで全143試合を通常開催で消化するためのハードルは高い。

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開幕の球音が3月20日に聞かれることはなくなった。新型コロナウイルス対策連絡会議で専門家から延期を提言され、受け入れるしかなかった。11年の東日本大震災以来となる緊急事態。斉藤コミッショナーは「今回はそれ(オープン戦無観客)以上に大変苦しい判断であった。選手はもとより、スタッフや家族を守り、何よりもファンの方々のご理解、同時にプロ野球の文化も守らなければならない。そのための決断であることをご理解いただきたい」と苦渋の決定を語った。

開幕を現状、通常開催できない理由は2点だった。専門家の三鴨氏は「基本再生産数が一定のレベル以下になる。もう1つは各球団の準備状況。教育、啓発、物品準備、それも含めた2つがキーになる」と説明。基本再生産数は1人の感染患者が罹患(りかん)中に何人の未感染者に伝染させるかの目安。この数値が高い数字を示し、拡大傾向が続いているという。さらに球場が開催にあたり、数万人の来場者の検温を行い、37度5分以上なら入場を規制し、大量の消毒液も準備する必要性が指摘された。残り約10日間での準備は極めて困難と判断され、延期を提言された。

緊急で日程を再編する。斉藤コミッショナーは「4月中に開幕できることを一応、目指している」と話した。ペナントの143試合制の維持は12球団の指針としてある。その中でNPBが複数の新開幕日程案を提示している。2週間後の4月3日や、約1カ月後の4月17日などが挙がっているとみられる。

だがいずれも何らかの「犠牲」を伴うことになる。再開幕が早まれば、準備期間が少なくなり、リスクをどれだけ減らせるか懐疑的だ。再開幕まで十分な期間を設ければ、五輪イヤーで中断期間(7月21日~8月13日)がある中で日程消化が困難になる。近年、シーズン終盤までの白熱したAクラス争いの根本であるクライマックスシリーズの廃止も有力な代替案となりそうだ。

無観客での開催は否定的。だが代表選手を派遣している五輪中の実施に斉藤コミッショナーは「最悪の場合はないことはない」と話し、中日加藤球団代表は「五輪期間中にやれるところがあるなら、やるべきじゃないかと個人的に思う」と同調した。12日に日程再編について再協議する。終わりの見えないウイルスとの戦いの中、難しいかじ取りを迫られる。【広重竜太郎】