プロスポーツの応援スタイルに超制限がかかる。日本野球機構(NPB)とJリーグは12日、第3回の新型コロナウイルス対策連絡会議を都内のJFAハウスで開催。感染症対策としての意見書には応援方法のリスク評価が提示された。
ジェット風船、鳴り物は「感染リスク高」、サメダンスですら「感染リスク要検討」と厳しかった。すでにプロ野球は開幕の、Jリーグは公式戦再開の延期を決め、リスタートの時期を模索しているが、スタンドに真の熱狂が戻る日はいつになるのだろうか。
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感染症の第一人者の専門家が作成した8ページの感染症対策に「サメダンス応援」が記された。今季から巨人に加入したパーラがメジャー時代に流行させた「シャーク・ダンス」を示している。両手の手のひらを上下に合わせる、一般的には大きな動きではない。だが新型コロナウイルスが猛威を振るう今は「感染リスク要検討」として挙げられた。
早々に各球団が自粛を決めていたジェット風船、立ったり座ったりを繰り返す広島特有の応援を始め、サッカーにも多く共通する応援方法が「リスク高」とされた。明記されたのは一例にすぎない。守護神山崎の「ヤスアキジャンプ」が有名なDeNA三原球団代表は「これから考えていかないといけない。何にしてもファンの人たちと応援団と協力してやってもらわないといけない」と受け止めた。傘による応援が名物のヤクルト江幡専務は「提言にはなかった。傘くらいはやりたいけどね…」と複雑な思いを口にした。
無用な興奮を制御する対策はアルコールにも向けられた。ファンに人気の売り子の削減や売店での限定販売、さらには当面の販売禁止の案も提示された。我慢を強いられるのはファンだけではない。感染リスクを下げるため、チームを守るため、ポジションが同じ選手が可能な限り行動をともにしない工夫は有効となる可能性があるとされた。内野手やFW同士で固まらないなど、万が一感染した場合でもチームの戦力に及ぼす影響を最小限にとどめる方策となる。
鳴り物や合唱による応援が日本のプロスポーツの醍醐味(だいごみ)。ソフトバンク松田宣の“熱男”、西武山川の“どすこい”は一体型の新しい文化になっている。NPBの井原事務局長は「感染のリスクの高い行為はやめていただくことになる」と話した。しばらくは既存の応援スタイルが封印を余儀なくされる。【広重竜太郎】
◆応援スタイルのリスク評価例
▽感染リスク高→×
【飛沫(ひまつ)感染リスク】
・ジェット風船
・指笛
・トランペット、ホイッスル等の鳴り物
・メガホンを打ち鳴らしながらの声援
・両手をメガホン代わりにした大声での声援
【接触感染リスク】
・肩組み、跳びはねなど集団での動きを伴う応援
・立ったり座ったりを繰り返す集団での動きを繰り返す応援
・大人数が旗の下で密集状態になり旗を動かすビッグフラッグ応援
・観客同士のハイタッチ
・大人数が新聞紙大の手旗を振るフラッグ応援
▽感染リスク中→▲
・応援団の声のリードによる手をたたき歌う応援
・応援団の太鼓のリードによる声援、拍手
・プレーの度の両手をメガホン代わりに使わない拍手や通常の声援
▽感染リスク要検討
・両手の手のひらを上下に合わせるサメダンス
・タオルを回したり、タオルを横に広げて左右に振る
▽巨人今村球団社長 提言いただいたことが開幕する条件だと思ってます。実現するように努力します。ファンと一緒にスポーツ文化は育ってきたから、ファンがいないプロ野球はやっぱり良くない。我々はこの素晴らしいスポーツ文化を守っていく。