#開幕を待つファンへ ロッテ福田秀平外野手(31)が、古巣ソフトバンクとの練習試合でまたも先頭打者本塁打を放った。1番打者としての初回アーチは、この1カ月間で3本目。開幕後も1番定着となれば、07年に前巨人監督の高橋由伸氏(44)がマークしたシーズン最多記録9本も塗り替えそうな勢いだ。なぜ試合開始直後からいきなり打てるのか。秘密のかけらが少年時代にあった。

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バットが踊るペイペイドーム。福田秀がしなやかに振り抜くと、白球がテラス席へと突き刺さる。「うまく打つことができました」。甲斐のささやき、松田宣のいじり…かつての仲間たちの声を集中力で封じ、少年のような笑顔で新たな仲間たちに迎えられた。

見慣れた光景になりつつある。2月29日は楽天松井の直球。3月7日はヤクルト石川のカットボール。そしてソフトバンク二保のチェンジアップ。左右、タイプに関係なく、実績ある投手の心に、ヨーイドンでひびを入れる。そのたびに「最初に悪い印象を与えられたかなと思います」と不敵な笑みを浮かべてきた。もちろん、後輩二保にも容赦はしない。

強者ぞろいの王者ソフトバンクでは、いつも主役ではなかった。1軍での9年間で1202打席。決して多くはないからこそ、大切さを知る。「その試合の1打席目は、すごく大事にしています」と強調し、試合前から若手以上に動く。「いい結果が出ていることはプラスに捉えたい」と自信につなげている。

昔からスタートにこだわっていた。青春ソングはKinKi Kids。特に「硝子の少年」は中学時代、野球の息抜きで行ったカラオケでもよく歌った。「歌い出しが大事なんですけどちょっと下手だったので、何度も練習しました」。努力の成果で、今でも1発目から「雨~が♪」と美声をスムーズに出せる。

井口監督は「上位で打ってもらえれば」と1番起用をまだ明言していない。左ひざ違和感で出遅れる荻野との兼ね合いになりそうだが、資質の高さはここまでで十分に示した。福田秀は「打順にこだわりはないです」とサラッと言い、その代わりに1打席目に思いを込める。強いチームには必ず君臨している、立ち会いから相手の戦意を刈り取るトップバッター。走攻守に強烈な存在感を示しながら、新天地でもきらり、駆け抜ける。【金子真仁】