阪神植田海内野手(23)が、ヤクルトとの練習試合(神宮)で本人もビックリの人生初満塁本塁打を放った。6回の代走から出場し、7回の第1打席で左腕中尾から右打ちで左翼席へ運んだ。プロ通算1本塁打という両打ちの若虎が、打撃向上を印象づけた。二盗も決めた足のスペシャリストが、内野手争いをさらに激化させる。

     ◇   ◇   ◇

植田は肘当て、すね当てを右から左に付け替えて右打席に入った。5点を追う7回2死満塁。途中出場で2番に入った第1打席の直前、ヤクルトは右腕五十嵐から左腕中尾にスイッチした。「1打席目だったので積極的にいこうと思って、初球からいけたのが良かったです」。代わりばなで真ん中に入ったスライダーを泳ぎながらすくい上げ、左翼席ギリギリに運んだ。「(打球が)上がり過ぎているかなという感じだったので。ちょっと風に助けられました」。先発組のバットが湿りがちの中、伏兵が豪快な1発でアピールした。

足のスペシャリストは昨季も主に代走で走塁やチーム3番目の12盗塁で貢献した。しかし、プロ6年目はそこからの脱却を狙う。俊足を生かすため、入団後に右打ちから両打ちに転向。昨年の先発は2試合だけに定位置奪取を目指し、今オフから「強い打球を打てるように」とバットを振り込んだ。試合前練習では毎回のように井上打撃コーチから「1球目が大事」と声を掛けられてきた。アドバイス通りの積極性で結果につなげた。

通算本塁打は昨年左打席から放った1本。ウエスタン・リーグでも入団した15年に右打席で放った1本だけだ。そんな男による満塁弾に植田自身が「打ったことないと思います。小学校とかでもない気がします」と驚けば、矢野監督も「冗談、と言ったら怒られるな。『いけいけ』と言ったらほんまに打ってね」と笑顔で意外性を評価。走力、守備力は十分の23歳へ「打つレベルが上がれば、レギュラーで出られる選手」と期待した。6回の代走時にはキッチリ盗塁も決めた若虎は「バッティングが課題」と慢心はなし。さらなる「打」のアピールで、開幕まで続く内野手争いを激化させていく。【奥田隼人】

▽阪神新井打撃コーチ(植田について)「段階を経て、振る力はずっと付いてきている。小技ももちろんだけど、あれだけ力強いスイングができて。やることはいっぱいあるけど、今日のホームランはすごく、いろんなことが凝縮された良いバッティングだった」