プロ野球独立リーグのルートインBCリーグが新型コロナウイルスの影響で存続危機に陥っていることが22日、分かった。当初は4月11日に開幕予定だったが2度延期し、いまも確定できない状態が続いている。

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プロ野球の独立リーグが新型コロナウイルスの感染拡大の余波で大揺れだ。今季、BCリーグに加盟2年目を迎える茨城アストロプラネッツの坂克彦監督(34)に現状を聞いた。かつて阪神の1軍で10年間プレーし、練習環境がない厳しい状況を明かした。

創設2年目の若い球団が新型コロナウイルス感染拡大のあおりを食っている。茨城は3月中旬にキャンプインしたが4月16日、大洗での練習を最後に事実上の一時解散。昨季の最下位から上位浮上を目指す茨城の坂監督は現場の窮状を明かす。「いつ練習を再開できるか分かりません。ここで選手が休めば、またイチからになる。しかも、練習場所がない。茨城には、甲子園や鳴尾浜みたいに専用施設がありません。選手の自覚に任せるしかない」。

阪神の1軍で10年間、プレーした。練習環境に恵まれたNPB球団とは対照的に、茨城など独立リーグ球団は自治体が管理する公共スポーツ施設で試合や練習を行うケースが多いが、いまは閉鎖され、借りられない。「ジムも使えません。家でやれることをやるしかない」と続けた。スポーツジムも2月以降、全国で集団感染が発生し、休業要請の対象に指定された。コロナ禍は独立リーグの選手から自主練習する場所を奪った。茨城では毎朝の検温や外出自粛を決めたほか、前日の行動履歴を提出させるなど細やかに感染防止に努めてきた。リーグ全体でも感染者はいないが、「コロナ次第ですが、このまま続けば開幕できない」と無力感をにじませた。

球団経営に強い危機感を募らせるのは、山根将大球団社長だ。「独立リーグの球団は経営母体があるわけではありません。活動できないことで、経営が非常に心配です」。主な財源は入場料収入やスポンサー収入だ。茨城では15社がプレミアムスポンサーで、52社がオフィシャルスポンサーとしてサポートする。だが、感染拡大の影響で辞退した企業も複数あった。開幕しても無観客が続けば、少なからず収益に響く。

選手やスタッフへの報酬の財源も不安定だ。同リーグはシーズン期間中、1カ月単位の給与体系で統一し、各球団がそれぞれ支払う。現時点で5月中旬以降の支給が確定していないという。茨城は巨人3軍とのオープン戦など6試合、4月の出陣式も中止に追い込まれた。山根球団社長は「開幕させるためにも、選手を感染させないのが前提です。茨城として開幕できる方法を考えていきたい。野球を楽しみに待つファンがいます」と前を向く。ウイルス流行でリーグに激震が走るなか、公式戦開始への最善策を探る。

◆坂克彦(さか・かつひこ)1985年(昭60)9月6日、茨城県生まれ。常総学院で3年時に夏の甲子園優勝。03年ドラフト4巡目で近鉄に指名され、楽天をへて、06年途中から阪神移籍。内野のユーティリティーとして活躍した。通算376試合出場で96安打、打率2割1分1厘。17年から2シーズン、現関西独立リーグの「06ブルズ」でプレー。19年から茨城監督で指導する。右投げ左打ち。

<ルートインBCリーグ>

◆リーグ名 Baseball(野球)とChallenge(挑戦)から。

◆歴史 06年に新潟、富山、長野(信濃)、石川が設立。07年に「北信越BCリーグ」として4球団で最初のシーズンが始まった。今年、神奈川が加入し、初めて12球団でシーズンを迎える予定。

◆監督 福島・岩村明憲監督や、神奈川・鈴木尚典監督など、12球団の監督はすべてNPB経験者。

◆リーグ形式 東西6球団ずつの2地区制で、前後期合わせて各チーム70試合を戦う。

◆予算 1球団の年間予算は平均約1億3000万円で、NPB球団の50~100分の1の規模(18年3月調べ)。ルートインホテルズが命名権を持ち、5社の公式スポンサーのほか複数企業のサポートを受ける。主な財源は入場料やスポンサー収入。

◆ドラフト 07年、石川・内村賢介が楽天から育成ドラフト1位指名されたのをはじめ、昨秋までに46人がNPBからドラフト指名を受けた。昨秋に西武からドラフト3位で指名された松岡洸希が最高順位。