プロ野球独立リーグのルートインBCリーグに所属する茨城は加盟2年目に挑む。3月に発表した今季スローガン「イバラの道を行け」に決意を込める。参入初年度の昨季は前後期ともにダントツ最下位。70試合で12勝にとどまる屈辱だ。新人監督だった元阪神の坂克彦(34)も「気持ちの部分は大きい。点差が離れると白旗になることも多かった」と言い「僕も指導者として、選手と一緒に成長しないと」と続けた。

昨年から一貫する姿勢がある。「考えさせる野球が大事です。こっちが与えてばかりでは、伸びていかない」。選手に押しつけず、個々の自覚をうながす指導法だ。3月のキャンプは、自主練習の時間を多めにした。NPBを目指す若者に伝える内容もシンプルだ。

「やれることはしっかりやろうということです。打つ打たない、抑える打たれるとかは相手がいること。全力疾走、ベースカバー、バックアップ…。プレーのなかで1人1人が意識していれば、できることです」

阪神在籍時は、守備固めでプレーする機会が多かった。13年は111試合に出場。長く過ごしたベンチでの時間も、財産になった。「桧山さん、関本さん、狩野さん…。みんな共通するのは1打席にかけて、すごく準備すること。試合中、イチから動き始めて、汗だくでベンチ裏に帰ってきていた」と振り返る。甲子園の一塁ベンチ裏通路はマットが敷かれ、走れるスペースがある。代打で勝負強さを示したベテランの振る舞いをいまも心に刻み込む。

坂は言う。「すべて準備なんですよね」。阪神で打撃コーチから指摘された言葉も参考にしている。「ネクストサークルで5割の力でスイングしているだけで、投手が全力で投げてくる球を打ち返せるか? 何本か、全力で振らないと」。後進に伝えている内容だ。

このオフ、坂はイベントなどで「(シーズンの)13勝目をどの段階でできるかです」と言い続けた。高校時代に常総学院で夏の甲子園を制した、故郷茨城で勝率1割台からの下克上を狙う。いつか必ずやってくる開幕を見据えて、後輩たちのために道を広げていく。(敬称略)【酒井俊作】