新型コロナウイルス感染から回復した元近鉄、日本ハム、楽天監督の梨田昌孝氏(66=日刊スポーツ評論家)が26日、本紙のインタビューに応じ、50日間に及んだ闘病生活を振り返った。生命にかかわる危機を告白。奇跡の生還を果たし、プロ野球開幕に向けて社会復帰に強い意欲を示した。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

-では病院内の医療従事者の様子をうかがいます

梨田氏 本当に大変ですよ。マスクも、防護服も不足し、みなさんでゴミ袋を切ったり、自分たちでフェースシールドを作っていました。特に患者と接する機会が多い看護師さんには頭が下がりました。孤独でつらいだろうと思っていました。でも前向きに、明るく、親身になってお世話してくれる姿に「なんとか回復しなければ」と勇気づけられました。

-医師、看護師も闘ってるわけですね

梨田氏 こちらの社会復帰を考えてくれてるから、やさしいけど、厳しくもあった。例えばリハビリに入ったときは、自力でペットボトルのフタを開けることができなかった。錠剤の薬をだすときも、後ろのつまみをうまく押せない。力が入らないからで、看護師さんは「自分でやってくださいね」という。でもうまくいかないのよ、これが…。情けなかったです。

-一方で感染者、医療従事者への差別、偏見が社会問題になっています

梨田氏 絶対にしてはいけないことです。人は一人では生きられない。みんなが助け合って、弱いところを支えていくのが日本人の良さです。わたしはおふくろから「自分がされて、いやなことは絶対人にするな」と教えられて育ちました。シングルマザーの看護師さんで、子供が幼稚園、小学校でいじめられたりする話を聞くと、すごく寂しい。心身ともに疲れて家に帰って子供の顔をみてほっとしたらいいが、子供が泣いていたらどういう気持ちになるか。次の日の仕事にも影響がでます。日本はこれでいいのか…。胸に手をあてて考えてほしいです。

-新型コロナウイルス感染は第2、第3波が予想されています

梨田氏 早くワクチンができればいいが、なかなか難しいみたいです。本当にそれが効くのか、効かなかったときにどこかに障がいが残ったりなどと言われてます。

-さてプロ野球の開幕が6月19日に決まりました。

梨田氏 おかげさまで健康を取り戻すまでに回復しました。体調はまったく問題がありません。わたしも開幕に向けて徐々に前に進んでいきたいと思っています。(おわり)