#開幕を待ちわびたファンへ-。12日の練習試合には12人すべての開幕投手が先発した。コロナ禍の特殊なシーズン。巨人菅野智之投手(30)の6月19日に向けた取り組みとは? 令和初の開幕投手たちの予行演習を深掘り。投手の永遠の課題でもある「立ち上がり」にも注目し、各投手の現在地を探った。
◇巨人菅野智之(日本ハム戦で5回6安打9三振2失点)
立ち上がり真っすぐで押した。先頭西川への初球、外角150キロで見逃し。1回は17球中10球が速球。2回は16球中5球、3回は17球中8球、4回は14球中2球、5回は21球中9球。1回だけ速球が変化球より多く、最速は153キロだ。
◆すごさと不安点 新フォームが完成し、代名詞のスライダー、カットボールとともに勝負球にカーブも加わった。昨年痛めた腰の状態が心配されるが、完全に復調。
◇阪神西勇輝(オリックス戦で5回6安打7三振1失点)
三塁線付近で小さくお辞儀をしてからマウンドへ。T-岡田に初球の外角低めシュートを中前に運ばれるも微動だにせず。ロドリゲスを三ゴロ併殺に打ち取り、吉田正には外角低めにきっちりチェンジアップを決め見逃し三振。初回はわずか7球だった。
◆すごさと不安点 毎試合、新たな配球を試しながら安定した結果を残してきた。プロ入り後巨人戦勝ち星がないが、開幕戦で初勝利を決める。
◇ヤクルト石川雅規(楽天戦で4回2/3を3安打5三振2失点)
立ち上がり、制球に苦しんだ。初球ど真ん中速球を茂木に左翼線に運ばれ二塁打。それでも表情は変えず。いつも通りロジンをポンとはたき、ふっと左手に息を吹きかける。その後は丁寧に四隅を突き、28球を使って最少失点で切り抜けた。
◆すごさと不安点 プレートの位置やフォームを細かく変えながら高い制球力を誇る“小さな巨人”。不安点はスタミナだが、省エネ投法で解決。
◇中日大野雄大(DeNA戦で5回11安打4三振6失点)
試合前に一塁側で遠投で入念に準備。1回先頭梶谷から2連打を浴びると、帽子を脱ぎ髪をかき上げるしぐさを繰り返す。初回2点を失い、2回にも5安打3失点。捕手加藤からの返球を奪い取るような姿にいらだちを漂わせた。
◆すごさと不安点 昨季セ最多投球回で最優秀防御率を初受賞。プレミア12での優勝後もキャンプまでキャッチボールを継続して感覚維持。自粛期間がどう影響か。
◇広島大瀬良大地(ソフトバンク戦で6回6安打7三振3失点)
2年連続開幕投手へ向けて、広島大瀬良が万全の調整を終えた。6回6安打3失点も、明確な課題が出たことが収穫だ。1回1死から4連打で2失点し「入りはちょっと工夫しないといけない。初回にああいう投球をするとチームも不安になる」と気を引き締めた。
◆すごさと不安点 武器カットボールは今年も抜群。対となるシュートも習得。昨年22被弾の1発病が不安も今年は対外試合7試合で被弾2本。
◇DeNA今永昇太(中日戦で5回7安打8三振3失点)
ゆったり左足から白線をまたぐと、マウンドに上がる直前、左手に持った帽子を胸にあて目を閉じた。初球の真ん中低め145キロ直球はボールも、1番武田を空振り三振。3番アルモンテには手痛い2ランを浴びたが、傷口を最小限に抑えた。
◆すごさと不安点 直球とカットボールの威力に加え「脇役」スライダーとカーブで配球の幅が広がる。力投型で球数が増えがちなのが唯一不安。
◇西武ニール(ロッテ戦で5回8安打1三振6失点)
制球力が持ち味のニールが、立ち上がりから定まらなかった。捕手・森の構えたミットから外れボール先行。カウントをとりにいった直球を打たれ、1回だけで4安打2失点。逆転の援護を受けた2回にも同点本塁打を浴び精彩を欠いた。
◆すごさと不安点 生粋のゴロ投手ニールは、今季も左右に散らして打者を打ち取る。不安材料の実戦不足は、対戦相手の入念なデータ収集で準備をしてカバーする。
◇日本ハム有原航平(巨人戦で5回4安打2三振無失点)
初球は146キロで、ストライク先行も「ボールにばらつきがあった」という。左打者にはチェンジアップ、右打者にはフォークを効果的に使った。1回2死から、四球と左安打も、近藤の好返球でピンチを脱し、尻上がりに調子を上げた。
◆すごさと不安点 冷静沈着な投球が光る。守備シフトへの理解度も高い。昨季は西武打線との対戦が1試合だけ。吉と出るか凶と出るか。
◇オリックス山岡泰輔(阪神戦で5回4安打3三振2失点)
ベンチ前でキャッチボールを終え、マウンドに小走りで向かった。白線をまたぐのは左足からで右翼席を見つめるように横向きにステップ。プレートに右手を数秒間当てた後、「信」の文字を指で刻むルーティンを行った。
◆すごさと不安点 球種多彩な山岡は新たにシュートを加えた。細かく自在に動かす変化球でバットの芯を外し、併殺を次々にとる。不安点は四球からの失点。
◇楽天則本昂大(ヤクルト戦で5回5安打2三振1失点)
新フォームを改良した。前回登板のノーワインドアップからセットポジションへ。試行錯誤の中で投じた初球は147キロ直球が外角高めへ。ヤクルト山崎に直球を同点ソロを浴びたが青木、村上はいずれも一ゴロ。即修正した。
◆すごさと不安点 新フォームで6度目の大役に臨む。従来のワインドアップをやめ臀部(でんぶ)からの回転を意識。実戦での試投は2度のみ。完成度はいかに。
◇ソフトバンク東浜巨(広島戦で3回1安打3三振無失点)
マウンドに向かう途中に、グラウンドに一礼。ピレラへの初球は147キロの内角寄り直球。4球目に打球を左内太ももに受けたが、素早く捕球し投ゴロに。治療後、再びマウンドへ。4番鈴木は133キロのスライダーで見逃し三振。
◆すごさと不安点 初めて経験する開幕投手の重みと責任感。当初開幕日の3月20日から集中力を切らさなかった。不安要素はこの日、打球を受けた左足の回復状況。
◇ロッテ石川歩(西武戦で4回10安打6三振8失点)
初回、西武4番山川に3ランを浴びた。入りの直球を捕手真後ろにファウルされ、14秒前後と普段の間合いの2倍、投球間隔が空いた。直後のシンカーは、山川が逃さない高さに。4回にも5連打。自分の時間に引き込めなかった。
◆すごさと不安点 波に乗ると手がつけられない投球をする。右打者外角からのシンカーも大きな個性だ。一方、制球の乱れを修正しきれずに崩れる試合もある。