昨年のパ・リーグ最優秀防御率右腕オリックス山本由伸投手(21)が、圧倒的な投球でチームに2020年初勝利をもたらした。最速は155キロで3者連続三振を奪う立ち上がりから、8回3安打10奪三振で無四球無失点。24年ぶりV奪回への切り札が「これからもチーム一丸となって、首位に立てるように全員で向かっていけたら」と頂点を目指し、最高の投球で滑り出した。

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勝ちへの執念が、その右腕にみなぎった。初回。茂木を153キロ快速球で、鈴木大をフォークで空振り三振。ブラッシュを見逃し三振に取った球は、この日の最速155キロをマーク。敵も味方も声を失う、圧巻の3者連続三振だった。

「ずっとストレートを練習してきていて、今日もかなり手応えがあったので、若月さんも自信を持って(サインを)出してくれたのだと思います。ストレートが一番欠かせないボールなので、ストレートあっての変化球なので。やっぱり、ストレートがいい日は変化球もよりいいかなと改めて思いました」

その投球が、チームを1つにした。初回1死満塁。中川の浅めの中飛で、三塁走者のT-岡田がホームへ決死のヘッドスライディング。ストライプユニホームを汚しながら、先制点を奪い取る。2回は2点を追加。援護に山本も応えた。中盤6回、2度目の3者連続三振。二塁すら踏ませない、圧倒的な投球だった。

今や山本には、世界が注目する。5月26日、ツインズ前田がインスタグラムに「山本由伸くんみたいな球投げたい」と書き込んだ。さらにインスタグラムのメッセージのやりとりで「投げ方教えてよ」と伝えてきた。相手は、山本が中学球児だったころから活躍してきたスター選手。山本は今も、メジャー中継で前田の投球をチェックする。「ぼくが前田健太さんに教えられることは1つもありません」と恐縮しきりで返事したが、山本にとってマエケンがスーパースターだったように、今は全国の球児が山本を追いかける。

94球の球数を考慮しての交代で12球団完封一番乗りはならずも「勝てたのが本当に良かった。毎試合、毎試合、ベストパフォーマンスが出せるようにしたい」と期待に応えた右腕。「素晴らしいピッチングでした」とねぎらった西村監督。開幕連敗をはね返す、チームの光になる投球だった。【堀まどか】

○…ヤンキース田中が山本の好投をたたえた。試合終了の5分後に自身のツイッターを更新。「山本由伸投手素晴らしい投球○」とつづった。

◆山本の援護点 昨季は登板時の援護点が9回換算で2・36と100イニング以上投げたパの投手で最少。先発20試合のうち援護点1点以下が9試合もあった。クオリティースタート(先発6回以上、自責点3以下)を16試合マークしたが、8勝止まりだった。