連覇を目指す巨人にニューヒーロー誕生だ。プロ通算1勝の2年目右腕、戸郷翔征投手(20)が宿敵広島打線を7回途中7奪三振の2失点に抑え、今季初勝利を挙げた。高卒2年目での開幕ローテーション入りは、球団では87年桑田真澄氏以来33年ぶりで、勝利も同氏以来。打線は昨季の対戦で1勝6敗だった天敵K・ジョンソンから3点を奪って援護し、17年以来3年ぶりの開幕4連勝を飾った。

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打者に向かって飛び込むように、勢いよく投げ込んだ。2点を勝ち越した直後の6回1死。戸郷が投じた71球目。初回から全く衰えない内角への150キロ直球で、ピレラを空振り三振に切った。「自分もしっかり気持ちを入れて抑えないといけない。結果に出てよかった」。続く安部も空振り三振。この回先頭の代打野間から、3者連続三振で打線の援護に応えた。

プロ初登板初先発は昨季、リーグ優勝を決めた9月21日DeNA戦。中継ぎでのプロ初勝利は同27日。阿部2軍監督の引退試合だった。そんな“持っている男”は、桑田氏以来の高卒2年目で開幕ローテ入りして7奪三振。肘を伸ばしたまま腕を振る独特のアーム式投法からのスライダーで4三振、フォークでも1個奪った。7回途中で降板したが、勝利を手にし「プレッシャーではありましたけど、(桑田氏は)偉大な投手なので近づけるのがうれしい」とちょっぴり笑みをこぼした。

疲れを見せない体力と20歳とは思えない堂々とした投げっぷりは、自然豊かな宮崎・都城で育まれた。趣味は釣り。小さい頃からいつも近所の山や川で遊んでいた。「友達と釣りに行ってそのままの勢いで泳いだりしてました」。投げる力も釣りが役立った。自宅の裏にある大きな駐車場に、趣味の魚釣りで使っていたネットを父健治さんが投球ネットに改良して設置した。戸郷は「それを的代わりにして、練習してました」。中学2年で捕手から投手に転向する前から、日々投げ込んでいた。

それでも中学時代は、プロ野球選手という夢を「恥ずかしくて言えなかった」。漁師やパイロットと答えていた少年はもういない。「次からどこのチームでも倒せるように、1勝1勝積み重ねられるように頑張っていきたいです」。昨季チームが唯一負け越した“コイ”を相手に勝利を釣り上げた。怖いものはない。次なる大物を求めてセ界に漁に出る。【久永壮真】

▽巨人原監督(戸郷の投球に)「いやもう見事に、持っている力を十分に発揮できたと思います。秋の練習、春も含めて自分でこの位置を勝ち取った。毎回チャレンジャーの気持ちで向かっていくことが大事。まだスタートしたばかり」

▽巨人炭谷(先発戸郷について)「『初回から全力でこい』と言ってました。約束通り全力で投げ込んでくれましたし、ナイスピッチングだったと思います」

◆戸郷翔征(とごう・しょうせい)2000年(平12)4月4日、宮崎県都城市生まれ。聖心ウルスラ学園2年夏の甲子園では早稲田佐賀から11三振を奪い完投勝ち。18年は宮崎県選抜で高校日本代表と対戦し、5回1/3で9奪三振。同年ドラフト6位で巨人入団。昨年9月21日DeNA戦で初登板初先発。同27日DeNA戦に5番手で投げ初勝利。昨季の公式戦は2試合で1勝0敗、防御率2・08。186センチ、75キロ。右投げ右打ち。