阪神能見篤史投手(41)が、41歳以上シーズンで阪神3人目となる勝ち星を挙げた。「チームとして勝てたのが良かったかなと思います」。3点リードの5回2死一、二塁。能見は駆け足でマウンドに現れると、クールな表情で京田と向き合った。まずは外低めいっぱいのフォークで見逃し。続けて空振りを奪うと、最後も外角低めのフォークで空振り三振。3球でさっそうと仕事を終え、相手の反撃ムードを断ち切った。

直後の5回の攻撃、打席にはバットを持つ能見がいた。先発した18年5月11日広島戦(マツダ)以来、800日ぶり。「速かったですね。振ろうと思ったんですけど、振れなかったですね」。岡田を前に見逃し三振に倒れたが、ツイッターのトレンドワードに一時「能見さん」が入るほど注目度は急上昇。6回2死から大島に内野安打を許したところで降板。ベンチに戻る左腕に大きな拍手が送られた。

今年の春季キャンプのブルペンには、ほぼ毎日ボールを投げる能見がいた。100球を投げた翌日もまた101球…。第1クールは休まず5日連続ブルペンに入るなど、キャンプで約1400球を投げ込んだ。「昨年の体の使い方が、あまりにもしっくりこなかった部分があった」。昨年は中継ぎを見込んで投げる量をセーブしてシーズン入りしたが、今年は先発の時と同様にひたすら投げ込み。40歳で51試合に登板しても、満足せず変化を恐れない。そして、追い込みにも耐えられる元気な体は健在だ。

09年から12年連続の勝ち星。矢野監督も「あそこは能見で任せると決めていた。年齢重ねても技術と経験で、打ち取ってくれるのは本当に大きかった」とベテランの熟練の投球に感服した。今季はすでに8試合に登板し、防御率は6・43。「打たれた分は取り戻さないといけないですし、1つ1つみんなで出来たらいいかなと思います」。チームの勝利のためにフル回転する。【磯綾乃】

▼能見が今季初勝利。41歳以上シーズンでの勝利は、球団では若林忠志41歳15勝(49年)、下柳剛41歳8勝(09年)42歳7勝(10年)に続き3人目。なお打席に立った阪神投手も前述の2人に次ぎ3人目(下柳は43歳の11年も打席に立った)。

▼これで09年から12シーズン連続での勝利。球団在籍中では5人目。なお最長は村山実、山本和行の14年連続。