起死回生の1発を確信して歩き出した。ロッテ井上晴哉内野手(31)は8回2死一塁、フルカウントから楽天森原の内角直球をマン振りした。「やるか、やられるか。距離は十分。切れないでくれとだけ思ってました」。左翼席中段に突き刺さる2ランで同点に追いつき、約4時間半に及ぶサヨナラ勝ちへとつなげた。

自身初の1試合3発だ。2回と3回、楽天石橋の速球を右翼後方へ運んだ。今季の本塁打パフォーマンスは勝ち力士の手刀をイメージした“ごっちゃし”。右へ捉えた外角高めを「右上手投げ」、8回のやや低めを「左下手投げで決めさせていただきました」とちゃめっ気たっぷり。懸賞金をもらうしぐさも披露した。

感覚は悪くなかったが、結果が伴わなかった。2週間のロードで練習時間が確保できない。久々の本拠地。昼から特打に励んだ。前回の楽天6連戦は1勝5敗。「投手を助けたい気持ちが強かった。野手が打てない日もあるので」。マリンのスタンドから贈られる手拍子にぬくもりを感じた。

ここ7戦、4番には10歳下の安田が座る。井上には覚えがある。新人の春、オープン戦で好成績を残して開幕4番に抜てきされたが、苦しんだ。試行錯誤を繰り返して18、19年と4番を定位置とした。「気持ち、すごい分かるんです。取り返したいとかじゃない。僕は経験させてもらった。それを持ってしっかり支えられるように頑張りたい」。8回、安田は三邪飛に倒れた。だが5番に、頼れるアジャがいた。【鎌田良美】

▽ロッテ安田(4回に3号2ラン。4番では初本塁打に) 打ったのはスライダーです。追加点を取ることができてよかったです。もっともっとチームに貢献できるように頑張ります。

▽ロッテ中村奨(3点を追う8回に楽天森原から右越え3号ソロ) 打ったのはストレート。最後まであきらめない気持ちで打ちました。