小さな大魔神が最終回のマウンドから消えた。DeNA山崎康晃投手(27)が、守護神から配置転換された。1点リードの7回に3番手で登板し、1回1安打無失点。8回はパットン、9回は三嶋が無失点でつないで逃げ切った。今季はここまで3敗を喫し、防御率8点台と苦しむ。プロ通算169セーブ、侍ジャパンのクローザーにまで上り詰めた山崎の配置転換は、17年5月以来3年ぶり。アレックス・ラミレス監督(45)が重い決断を下した。

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不自然な光景だった。1点リードの7回のマウンドに山崎がコールされた。ベンチから駆けだす足取りは軽快とはいかない。不慣れな持ち場に違和感は否めない。こわばった表情のまま投球モーションに入った。

先頭のパーラを投ゴロも、重信は遊撃内野安打。打席に迎えた丸をカウント2-2と追い込んだ。高城のサインをじっと見つめる。丸との勝負と同時に、大きくリードをとる俊足の重信との攻防もある。右足のプレートを外し、仕切り直した。

サインを見てから、プレートを外す同じ光景が3度も繰り返された。けん制にちゅうちょしたのか。表情に険しさが増す。打席の丸、一塁上の重信。カウントは2-2から進まない。セットポジションを長くとって、今度は一塁へけん制を入れた。

プロ入り後、けん制は6月27日阪神戦の2球だけ。これが3球目だった。バッター勝負を貫いてきたが、不自然な“1球”を投じてでも、重い空気を強引に動かしたかった。丸をツーシームで空振り三振も、重信には二盗を許した。坂本への初球は暴投で2死三塁。ツーシームでなんとか中飛に仕留めた。8回はパットン、9回は三嶋に託し、ベンチから見守る姿も不自然だった。

プロ1年目から大役を担い、通算169セーブを積み上げた。今季は13試合に登板し、うちセーブ機会9試合で早くも3敗。防御率8・03と苦しむ。配置転換を決断したラミレス監督は「負けている時に使うのは考えていなかった。勝っている時に」と最大限の敬意を込めた。マウンドに行き声を掛け、同点のマウンドから降ろし、打たれても最後まで投げさせる。守護神復活へあらゆる手を尽くしてきた。「彼自身が克服しなければいけない。外からできることはそんなに多くない」と話した。

連敗は2で止め、巨人戦の連敗を5で止めた。それでも不自然な光景だった。17年5月19日、巨人戦以来の“中継ぎ登板”。山崎は「特にコメントすることはありません」と口を閉ざした。ラミレス監督は「精神力の強さは誰にも負けないものがある。彼が自分自身で克服して、元のポジションに戻って欲しい。優勝するためには山崎がクローザーじゃなければいけない」と期待と信頼をシンクロさせた。小さな大魔神は1人しかいない。【為田聡史】