ソフトバンク期待のメジャー通算54勝左腕、マット・ムーア投手(31)が待望の来日初勝利を挙げた。日本ハム相手に先発し、5回4安打無失点。150キロを超える速球とチェンジアップ、カットボールなどの変化球を駆使して7三振を奪った。チームに昨年7月の9連勝以来となる今季初の7連勝をもたらし、首位固めロードを突き進む。

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続投を志願した。あと1人で来日初勝利の権利を手にする1-0で迎えた5回2死一、三塁のピンチ。ムーアはマウンドにきた森山投手コーチに「行かせてください」と言い切った。試合前は90球メドの登板予定だったがこの時点で89球。勝ちたい気持ちを前面に出して、西川をチェンジアップで空振りの三振に仕留めた。その後、鉄壁のリリーフ陣の踏ん張りと3得点の打線、そして好守備もあり、ホーム初登板で初白星を手にした。

復帰初戦でもあった。「ホームで来日1勝目をファンの前で見せられてよかった」。ここまでビジター2試合で先発も白星が挙げられず、3試合目登板を翌日に控えた7月7日、練習中のアップで左ふくらはぎを痛め、筋損傷と診断された。リハビリ生活の苦しい日々が続いたがファミリーとの時間が大きな「薬」になった。

ムーア 奥さんと長男2人が一緒にいてくれなければ、ここまでこれたかどうか分からない。奥さんは偉大な存在。これからも家族3人で福岡を楽しみたい。

そのファミリーがスタンドで観戦。「奥さんと息子が来てくれていた。応援の声も聞こえていた」と力に変えた。リハビリ中だった7月19日には2軍で苦しむ田中の誕生日を、サファテとともに祝うなどチームメートを励ましていた。

工藤監督にとってもうれしい勝利だった。開幕ローテーションでは同一カード6連戦の初戦を任せるほど信頼していた。「本人もうれしいでしょうが、チームにとっても大きい」と声も弾んだ。

「ウイニングボールは記念にとっているメジャー時代のコレクトの中に入れるよ」。今季初のタカガールデーでチームに今季初の7連勝をもたらした。試合後に上がったピンクの花火は、ムーアファミリーに最高の思い出となった。【浦田由紀夫】

◆マット・ムーア 1989年6月18日生まれ、米国フロリダ州出身。07年米ドラフト8巡目にデビルレイズから指名され契約。11年メジャーデビュー。13年には自己最多17勝を挙げた。メジャー通算54勝。ジャイアンツ-レンジャーズ-タイガースを経て今季ソフトバンク入団。190センチ、95キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸は3億円。