阪神藤川球児投手(40)が、今季限りでユニホームを脱ぐことを決めた。8月31日、球団が発表した。
開幕から守護神を務めたが、コンディション不良に苦しんだ。ここまで11試合で1勝3敗2セーブ、防御率7・20。現在は2軍調整中で、日米通算250セーブまで残り5と迫っている中での決断となった。引退会見は1日に兵庫・西宮市内で行われる。
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球児で思い出すのは知将・野村克也のぼやきだ。98年オフに阪神監督に就任し野村はその年のドラフトの目玉・松坂大輔を獲得した西武をうらやましがった。「西武は松坂。ウチは藤川球児やぞ」とブツブツ言った。甲子園の大スターと比べ、その知名度をぼやいた。正直、当時は野村がそう言っても無理もない部分はあったと思う。
その後の球児についてある球団関係者はこう舌を巻く。「投手としてのセンスが抜群。自分の体について、どう使えばいいかを熟知している。あんな選手はそうはいない」。
しかしセンスだけではなかっただろう。野村のぼやきに代表される世間、ファンの目と戦ってきた野球人生だったと思っている。
「ベテランと呼ばれるのが好きちゃうんです。勝負の世界に年齢は関係ない。力があればトシは関係ないし、逆に実績があっても力が衰えれば試合には出られない。ことさらベテランが頑張っている…というようなのはね」
そう聞いた。その言葉通りの引退表明か。思うような球を投げられない状態なので辞める。シンプルだ。同時に阪神に対する愛着を感じるふるまいだと思う。ベテランの去就は常に課題だ。ハッキリと意思を示せば問題は起きない。
「日本からメジャーに行って成功した投手はいる。でも阪神からメジャーに行って成功した投手はいない。だからやってみたい」。まだ大リーグに挑戦していた時期、帰国した際にこんな話も聞いた。故障もあって夢は果たせなかったが自分を育ててくれた阪神に対する熱い思いがあった。
「お疲れさまでした」と言う気はまだない。球児は今季を全うするはずだ。巨人を追い掛けるシーズンの最後、逆襲のために現役最後「散り際の力」を見せてもらうまでそのセリフはとっておきたい。(敬称略)【編集委員・高原寿夫】



